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カートピア10月号 TOURING With SUBARU SUBARU XV

本棚に埋め尽くされたロビーラウンジ。静寂のなかページをめくっていると、時の経つのを忘れる。

Touring with SUBARU

読書の秋。
旅を通じて本との出会いを愉しむ

神奈川県箱根町〜小田原市

本棚に埋め尽くされたロビーラウンジ。静寂のなかページをめくっていると、時の経つのを忘れる。

吹く風に秋の深まりを感じ始めると、つい本に手を伸ばしてしまう。“読書の秋”とはよく言ったもので、秋の夜長はじっくりと読書に耽りたくなるもの。今回は、普段、手に取ることのない新たな本との出会いを求めるツーリングを提案します。旅の始まりは、今年8月にオープンしたばかりのブックホテル。滞在中、幅広いジャンルの本と一緒に過ごすことができ、本好きにはたまらないスポット。夜更けまで本と戯れた翌日は、文学の里・小田原へ足を伸ばします。

本に囲まれて泊まる悦楽のときを過ごす


箱根ドライブの途中、国道1号から脇にそれると偶然、木々の間から箱根登山鉄道の赤い車両が見えた。 

箱根ドライブの途中、国道1号から脇にそれると偶然、木々の間から箱根登山鉄道の赤い車両が見えた。

小田原と強羅とを結ぶ山岳鉄道・箱根登山鉄道と並走する国道1号。ダークグレー・メタリックのレヴォーグ1.6GT-Sは箱根湯本駅周辺の喧噪を抜け、切り立った山肌と自然林に覆われるワインディングロードを走り、徐々に標高を上げていく。宮ノ下交差点で国道138号へ。目指す強羅へはうねうねとした急坂が待ち受けるが、パワーのあるレヴォーグならそれも愉しい。強羅駅を過ぎると企業の保養所や別荘が集まる閑静なエリアにたどり着く。

本棚の一角には読書できる小空間が。

本棚の一角には読書できる小空間が。

テラスに樽型露天風呂のあるマウンテンビューツイン。

テラスに樽型露天風呂のあるマウンテンビューツイン。

今回のツーリングの目的は、今年8月にオープンしたブックホテル「箱根本箱」を訪れること。本好きの私にとって、読書の秋をゆったり過ごすのに最適の場所だ。元保養所という建物の外観はそっけないほどにシンプル。エントランスのドアは二重で、内側が木製なので内部の様子が窺い知れないが、ドアが開いた途端、目の前に飛び込んできた情景に目を奪われた。吹き抜けのロビーの左右の壁は天井まで巨大な本棚で埋め尽くされ、正面のガラス越しに山景色がスクリーンのように広がる。夢のような空間に一気にテンションが上がる。ここ「箱根本箱」は、出版流通大手の日本出版販売株式会社(日販)の元保養所を、株式会社自遊人が再生したブックホテル中心の複合施設。“本に囲まれて「暮らす」ように滞在”をテーマに、ロビーをはじめ館内の至るところに国内外の良書、約1万2000点が揃う。滞在中は全ての本を自由に手に取り、購入することができる。主な選書は日販の新ブランド「YOURS BOOK STORE」が手がける一方、客室を中心とした各所には、作家や俳優など各界の本好き37名の選書を集めた「あの人の本箱」も。全室に温泉露天風呂が付くので、滞在客は部屋に籠りがちになるかと思いきや、大半が夜遅くまでお気に入りの一冊を求めてパブリックスペースを彷徨っている。館内の随所に遊び心のある仕掛けが隠されているのもユニーク。私自身は美術家・横尾忠則氏の本棚で新たな本との出会いがあった。

オープンキッチンカウンター席と個室を設けたレストラン。

オープンキッチンカウンター席と個室を設けたレストラン。

手前/トマトのムースとメイチダイのタルタル、奥/白桃のレモンクリーム(パスタはキッタラ) ※料理の一例

手前/トマトのムースとメイチダイのタルタル、奥/白桃のレモンクリーム(パスタはキッタラ)
※料理の一例

本で脳が活性化されると自然と食欲も刺激されるもの。ロシアの作家・エカテリーナによるブックアートが目を引くレストランで、自然派イタリアンのディナーをいただいた。ミラノの名店で腕を磨いた佐々木祐治シェフが自ら地元生産者の元へ足を運んで素材を仕入れ、手打ちパスタや自家製の生ハム、カラスミを用意した、手間のかかった内容。季節ごとの料理を目当てに、ここへ訪れるのも良さそうだ。

思わぬ出会いに導かれ
文学者ゆかりの景勝地へ


尾崎一雄ゆかりの下曽我付近の高台からの風景。雲間からは富士山、眼下には梅林が広がり、早春には可憐な花を付ける。

尾崎一雄ゆかりの下曽我付近の高台からの風景。雲間からは富士山、眼下には梅林が広がり、早春には可憐な花を付ける。

久しぶりに本と過ごした翌日は小田原へ。明治20(1887)年、国府津駅までの開通を機に東京へのアクセスが良くなったことや、冬でも温暖な気候であることから政財界人や文学者が多く居を構えた場所だ。この地で生まれた文学作品もある。そんな小田原ゆかりの文学者の生涯や作品を紹介している「小田原文学館」に足を運んだ。

芝生庭園の中に建つスパニッシュ様式の「小田原文学館」。サンルームやベランダには昭和初期のモダニズム建築の特徴が表れる。国登録有形文化財。

芝生庭園の中に建つスパニッシュ様式の「小田原文学館」。サンルームやベランダには昭和初期のモダニズム建築の特徴が表れる。国登録有形文化財。

小田原文学館の敷地内に下曽我から移築された「尾崎一雄邸書斎」。ガラス越しに文机の上の様子や愛飲の酒瓶を眺めることも。

小田原文学館の敷地内に下曽我から移築された「尾崎一雄邸書斎」。ガラス越しに文机の上の様子や愛飲の酒瓶を眺めることも。

桜並木で知られる西海子小路[さいかちこうじ]に面した建物は、明治期に宮内大臣などを歴任した田中光顕の別邸として建てられたもので、10数名にのぼる文学者の軌跡を知ることができる。敷地内には小田原で多くの童謡を創作した北原白秋を紹介する「白秋童謡館」も。今年は白秋が小田原に移住して100年、白秋が活躍した児童文芸誌『赤い鳥』創刊から100年にあたり、「白秋童謡100年事業」を展開中だ。小田原市立図書館の野村和弘さんが、小田原出身の芥川賞作家・尾崎一雄にまつわるおすすめスポットを教えてくれた。「彼が生まれ育った下曽我は大変風光明媚な場所。小説『日の沈む場所』には尾崎邸からの眺めが描かれ、書斎部分がこちらに移築されています」。そこからクルマを30分ほど走らせ、国道1号・県道72号を進み、尾崎一雄邸跡付近に来ると雄大な風景が開けた。左奥に相模灘、右手に富士山、眼下に曽我梅林が広がる。病弱だった尾崎の、山紫水明ののどかな場所での暮らしが瑞々しい描写で私小説に綴られている。

「平井書店」で出会った『小田原たてものさんぽ』864円。地元在住のイラストレーター・たなかきょおこ氏の作品。

「平井書店」で出会った『小田原たてものさんぽ』864円。
地元在住のイラストレーター・たなかきょおこ氏の作品。

「平井書店」の店長・平井義人さん。当初寡黙な印象だったが、本の話を始めると途端に饒舌に。本を心底愛しているのが分かる。

「平井書店」の店長・平井義人さん。当初寡黙な印象だったが、本の話を始めると途端に饒舌に。本を心底愛しているのが分かる。

小田原の文学散歩の後は町なかの本屋さんへ。創業120余年の「積善堂 平井書店」はその昔、小田原に別邸のあった山県有朋の奥様も訪れ、論語の一節から「積善堂」の屋号を授かった逸話が残る。地元に根差した書店だけに、郷土の本コーナーには北条五代の歴史書から小田原ゆかりの文学作品、蒲鉾や外郎[ういろう]など地元の食にまつわる本が並ぶ。店長の平井義人さんは、出版社や著者を招くブックトークの開催やまちなか古本市「小田原ブックマーケット」(年1回開催)への参加など地域活動にも積極的だ。「本を介して人と人、人と街、人と本との交流が生まれたら」と話す。本を探すことが町歩きや人との出会いに繋がる。本の持つ無限の可能性に気付かされる旅となった。

今月のルート


箱根本箱〜白秋童謡館〜
平井書店

今月の紹介ポイント


箱根本箱

神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491
TEL 0460-83-8025
宿泊料金:1室2名利用で1名1万9786円〜
http://hakonehonbako.com/

※館内には、ライフスタイルショップとショートフィルムシアターも併設。

小田原文学館・白秋童謡館

神奈川県小田原市南町2-3-4
TEL 0465-22-9881
営業時間:9:00〜17:00(最終入館は16:30)
定休日:年末年始(12月28日〜1月3日)
入館料:大人250円(白秋童謡館と共通)
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/public-i/facilities/literature-museum/

積善堂 平井書店

神奈川県小田原市栄町1-16-29
TEL 0465-22-5370
営業時間:9:00〜19:00(日曜・祝日は10:00〜)
定休日:1月1日、5月6日、不定休
https://books-hirai.com/

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