ここがSUBARUですVoL.78
新型FORESTERの
ルーフスポイラー&
リヤゲートガーニッシュ
第一の目的は
燃費性能の向上
クルマのスポイラーは、走行中のクルマ周辺の空気の流れをコントロールするためのパーツです。レーシングカーなどモータースポーツの場合は主として車体を地面に押さえつける力を高め、よりスピードアップを図ることを狙いとしていますが、市販車の場合は空気抵抗を軽減し、より燃費を向上することが最大の狙いです。さらにデザイン面ではスポーティなシルエットを表現するという狙いもあります。
今回新たに開発した新型フォレスターのルーフスポイラーも、最大の狙いは空気抵抗を軽減することでした。走行中のクルマはボディ後方に気流の渦が発生し、それが負圧となってクルマを後方に引き込むような力を発生します。フォレスターのようなSUV系車両が採用している2ボックスタイプの車型の場合、インプレッサG4やレガシィB4のような3ボックスタイプの車型よりも、その力が大きくなるのです。ルーフスポイラーは風の流れを制御することで、気流の渦の発生を抑え負圧を軽減します。新型フォレスターでは、ルーフスポイラーを大型化するとともに、左右サイドに翼端板(ルーフスポイラーサイド)を追加することで、ボディサイドの空気の流れから発生する気流の渦も軽減しています。その結果、空気抵抗係数(Cd値)を改善し、高速走行をした場合の燃費を大きく向上させています。
新デザインで
スポーティイメージを表現
新型フォレスターのリヤまわり開発における一番の狙いは、全幅はそれほど大きくせずにゲートの開口幅を広げ、積載容量も増やすことでした。そのためにボディ骨格から見直して細部を詰めていき、旧型より134mm広げた1300mmの幅を確保し、荷室容量も大きくなっています。
このキャパシティの大きさを表現するために、リヤコンビランプには左右の広がりを感じさせるコの字形状を採用しました。ランプの中にリヤゲートガーニッシュが食い込んだコの字型ランプは、新型フォレスターで初めて採用したもので、フォレスターの後、北米で発売された新型アウトバックや、新型レヴォーグにも採用されている新しいSUBARUのデザインです。
また、翼端板もXVに次いで新型フォレスターに採用されたパーツで、空気抵抗を軽減すると同時にデザイン面でも新たな表情を与えています。特にX-BREAKでは、Touring,Premium,Advanceなどの標準仕様モデルに対してリヤゲートガーニッシュと翼端板の造形を変え、いずれも同一のブラック塗装とすることで、ボディパネルとの一体感をもたせ、よりアクティブなイメージを際立たせています。
運転視界の確保
新型フォレスターのリヤまわり開発においてもうひとつ、良好な運転視界を確保するという狙いがありました。そのためにリヤガラスを大きくし、スポイラーにおいても運転視界を妨げないように配慮した設計をしています。空気抵抗に関係するのはスポイラーの外側の面だけなので、その機能に影響を及ぼさない内側の面を削ぎ落とすことで、ドライバー席から見た時に、スポイラーを装着していない状態とまったく変わりない運転視界を確保しています。また、リヤワイパーの払拭エリアを最大限に確保するために、ルーフスポイラーの内側面には、ワイパー稼働時にワイパー先端部との干渉を避けるための窪みを設けています。
燃費を向上するという本来の機能を発揮しながら、エクステリアデザインにも大きな影響力を持つスポイラー。ただし、運転時にはその存在を少しも感じさせないのがSUBARUらしいところだと思います。
今月の語った人
中澤 健治
外装設計部 外装設計第二課
群馬県安中市生まれ。故郷の安中は磯部温泉などで知られる旧中山道の宿場町。小学生の時に始めた野球は高専卒業まで続け、高専の最後には監督を務める。山梨での大学生活を終えSUBARUに入社してからは、休日を利用して自転車で国道1~5号を走破し、北は宗谷岬から南は桜島まで日本一周を達成した。現在は職場の仲間と100kmマラソンに挑戦中。夢はいつの日か100マイルを走破する『ウルトラトレイル・マウントフジ』にエントリーすること。
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