SUBARUは全日本スキー連盟(SAJ)の活動を応援しています。
最高のシーズンでないなら、その分、収穫の多いシーズンに。
目下、スキージャンプのワールドカップが開催されているヨーロッパは、同時に吹き荒れるコロナ禍の最前線。2018-2019シーズンのワールドカップ個人総合王者である小林陵侑選手は、この極めてイレギュラーな状況下をどう戦っているのか。転戦の合間、日本のエースが現状と心境を語りました。
コロナが大変なのは全員一緒。むしろ影響が大きいのは…。
-コロナと戦いながらの前代未聞のワールドカップとなってしまいました。
そうですね。僕も周囲も細心の注意を払いながら転戦しています。少し面倒なのがコンディション調整で、今は体育館もジムも予約しないと使えない。だから調整したくなったら、最近は外にバーっと走りにいく感じです。あとメンタル面で言えば、開催地の集まるヨーロッパにシーズンを通してずっといなきゃいけないのが地味に効きます。いつもの年は連戦の合間に一時帰国するんですよ。日本で温泉でも浸かってメンタルをリセットして、よしまた頑張るぞって流れがこれまでなんですが、今季はそれができないのが辛いですね。
-ヨーロッパの選手はその点では少しアドバンテージかもしれませんね。
家に帰りやすいのは、僕ら海外から来ている選手としては羨ましいところですね。でも、コロナが蔓延するこの状況下で調整に苦労するのはみんな同じ。どの選手も結局大変だと思います。
-コロナは、今シーズンの戦績にも影響はありますか?
いや、どうでしょう。そこはフラットですからね。むしろ影響があるとするとルール変更の方かな。ジャンプは毎年細かなルール変更が行われるんですが、今シーズンは特にスーツのルールが変わり、靴の中のサポートアイテムも変わり、調整幅がちょっと大きめ。日本勢はコロナの影響で夏のヨーロッパの大会に出場できなかったので新ルールへの適応に若干戸惑っていて、ヨーロッパ勢より2、3歩くらい出遅れていた感じですかね。シーズン中盤になってようやくその遅れも取り戻すことができています。
-わずか1、2cmのルール変更でもデリケートに響いてしまうんですね。
はい。ジャンプってとても感覚的な競技なんです。自分の感覚がピタッと合った時をメモリーして、後日それを再現できるかどうか。言い換えれば、自分のジャンプを確信しているかどうかが極めて大事。なので「練習の分だけ、やった分だけ」が通じにくいところがあります。小さなルール変更でも僕たち選手が過敏になるのは、それぞれの感覚に大きく作用するからだと思います。
トレーニングに向かう時、運転していると気持ちが作れる。
-現在、ヨーロッパを転戦中ですが、「移動」についても伺えれば。他の選手からはよく過酷だと伺います。
過酷というか地獄です(笑)。試合後、車内に3、4時間はざらで、8時間もまぁ普通。去年は12時間の超長距離移動もありました。僕は普段から運転好きなんですが、さすがにシーズン中の移動でステアリングを握るわけにはいかない。じっと座ってるだけというのは相当厳しいですね。
-それだけ移動が過酷だと、コンディショニングにも影響しそうです。
ヨーロッパではレンタカーやリース車を使っているんですが、ときに直角シートの車での移動になってしまうと体が痛い(笑)。選手はとにかく快適に移動をしたいわけで、絶対SUBARUの車の方が乗り心地がよくて疲れないし、そっちで移動したいと切に思っています。SUBARUはずっとSNOW JAPAN をサポートしてくださっているので、自分にとってすごく身近な印象があります。
-プライベートでもよく車にお乗りになるとか。
そうですね。たとえば日本にいて一人でトレーニングに向かう時、運転していると集中できるというか気持ちを作れるところがあります。でも今は空港に車を預けているので、シーズンが終わったら、まずは家までの帰り道を楽しみたいですね。いつも自然体で過ごすことを意識していて、「アスリートだからこうしなきゃ」という窮屈な型を忘れて生活するようにしています。車を走らすのもその一部ですね。
-最後に今シーズンの残りの目標、そして今後の展望を。
今季も「ワールドカップ1勝」という目標で乗り込んできましたが、現状はそこからやや遠いところにいる感じです。いろいろ試行錯誤を重ねていて、最近はようやくトップ10に食い込めるようになりました。今まさに苦しい時の持ち直し方を経験していて、そういう意味では、決して最高のシーズンではないものの、その分収穫の多いシーズンだと思っています(※インタビューから数日後の2月13日、見事今季初Vを飾り、2月19日には2勝目を挙げる)。
今後はワールドカップ・もさることながら、日本中から注目と期待を集める世界選手権と北京オリンピックで金メダルを狙っていきます。コロナ禍での競技生活は大変ですが、飛ぶのが楽しいのは昔も今も一緒。結果は簡単には出ないものなので、腐らず地道にやっていきたいですね。