SUBARUは全日本スキー連盟(SAJ)の活動を応援しています。
支えてくれる周囲の存在が、私の何よりの強み。
今年もアメリカのアスペンで開催されたスノースポーツの世界大会「X Games」。空中で技を繰り出すスノーボード女子ビッグエア部門では、日本のトップ選手が一際鮮烈な技を放ち、世界を驚愕させました。鬼塚雅、22歳。コロナ禍でも前進をやめない彼女の今の心境に迫ります。
目標から逆算して動くタイプなので、今度のコロナは…。
-X Games、お疲れ様でした。驚異的な大技をメイクされましたね。
はい、キャブダブルコーク1260(縦に2回転しながら、横に3回転半する技)ですね。夏の間にマットで猛練習していた技で、今シーズンは本番で決めたかったから、とてもうれしいです!
-着地を決めたのは女性初。50点満点中47点という圧巻のスコアでした。
それで優勝できればなお最高だったのですが(笑)。X Gamesは2本のベストトリックの合計点で決まるので結果は銀メダルでした。とはいえ、キャブダブルコーク1260を来年のオリンピックで確実なものとして出す、というのが当初の計画でした。だから正直、今年は挑戦のみで成功までは思い描いてなくて、X Gamesでは想定以上の成果を残すことができたかなと思っています。
-大胆に繰り出しているようで、技の完成まで緻密に計画立てているんですね。
私は結構、目標から逆算して動くタイプなんです。この時期までにこれを習得する、そういう成長計画はわりとしっかりと考えています。だからこそというか、今回のコロナ騒動でいろいろ変更を強いられちゃいましたが…。
-そうですね。前代未聞の状況です。やはり影響は深刻ですか?
どうしても練習の頻度は減るし、海外にも渡れないので練習の質にも関わってきます。遅れを取らないように計画を練り直さなくてはならず、そこが何より大変でしたね。軌道修正の結果、フィジカル面はいい状態を維持できていて、メンタル面もこの状況下だからこそ逆に忍耐力や柔軟さが鍛えられていると思います。今まで割けなかったところに時間を使えるようになったと感じています。
-競技界全体として変化を感じる部分はありますか?
無観客なので会場がとても静かで、そこが一番の変化でしょうか。スタート台に立った時に声援がなく、「練習なのかな?」って勘違いしそうです。でも、選手によっては試合よりもそれ以前、外出もはばかられる状況なので練習場所の確保などに苦労しているかもしれません。私の場合は本当に恵まれていて、環境を整えてくださる方が大勢います。例えば、私のホームゲレンデでは19メートルの特別キッカー(ジャンプ台)を用意してくださいました。練習環境としてこんなに大きいキッカーは国内では他になく、感謝しかありません。そういう支えてくれる周囲の存在が私の強みだなと改めて思っています。
車の中は、心の距離が近づく場所だと思う。
-そんな頼れる人々の中でもご家族は特別だと伺っています。
そうですね。最近、自宅時間が長くなって、家族と過ごす時間をいっそう大切にしています。私の一番のサポーターは親やきょうだいで、とりわけ母はもうずっと長く練習を送迎してくれています。昔は、よく熊本から福島まで母と車で移動していました。妹も一緒だったんですが、2、3日はかかるんです(笑)。
-車で福島まで!車内で過ごされてきた時間が人よりずっと長いのでは?
そうですね。子供の頃からだし荷物も多いので、自ずとこれまで車移動ばかりでしたね。SUBARUですか?乗る機会はよくあります。ヨーロッパの雪道ってすごく過酷なんですが、深い雪をものともせずに走破してくれて、あれは頼もしい限り。エンジンのよさもそういう時に実感できますよね。実は私の叔母がSUBARUのディーラーに勤めていて、レヴォーグ、レガシィ、XV、ステラ2台の計5台を身内で乗っています(笑)。
-鬼塚さんご自身も運転されるのでしょうか?
友人とドライブに行くときにはハンドルを握ります。わりと運転好きなので。まだマイカーは持ってないのですが、4月に大学を卒業すると練習に向かう機会が増えるので、そろそろ買おうかと思っています。車内での過ごし方?一緒に乗っている人と、たくさんコミュニケーションをとりますね。おしゃべりとかゲームとか。車内は心の距離が近づく場所だと思っていて、その会話の積み重ねもあって母や妹とはすごく仲がいいんです。
-練習に向かう車中では、あるいは寡黙に一点集中するのかなと。
私の場合はまったく逆です。ウォーミングアップまでは集中しないようにしています。集中力には自信があるんですが、そこで大事になるのは然るべきタイミングまで「できるだけ集中しない」ことだと思っています。なので移動中はリラックス、よく妹とスマホでゲームなんかしています。昔は、お互い負けたら悔しがって無限にやってしまい、気が付いたら熊本から長野に着いていたということがありました。
-集中の秘訣と同時に負けず嫌いな一面も伺い知ることができました(笑)。
そう、間違いなく負けず嫌いですね(笑)。でも、こういう前のめりな性格が私の競技人生を支えていて、とにかく挑戦するし、失敗しても諦めません。下手に優勝しよう、いい成績を取ろうなんてそればかり考えると、手堅い技に終始してしまいます。ではなく、現状で満足せず、常に全力で挑戦する。その上できっちり優勝したいなと思っています。
-最後にぜひ今後の目標を教えてください。
3月に世界選手権があるので、そこでしっかり挑戦して成果を出したいと思っています。雪や風の状態に恵まれればキャブダブルコーク1260をまた出したい。すると、優勝も十分に狙えるはずです。そしてその先にある北京オリンピック。そこで金メダルを取りたいです。