クリスタルホワイト・パールのレガシィB4リミテッドで西へ向かった。目指すは琵琶湖。休憩を入れて東京から4時間を超えるドライブもアイサイトの滑らかなクルーズコントロールとタッチの良い本革シートのおかげで、快適に過ごすことができた。今回はこのエリアの豊かな水環境が育んだ食文化に触れる旅に出かけた。
三世代で受け継いだ近江の食文化
BIWAKO DAUGHTERS
琵琶湖に行く前に寄り道したのが伊吹山ドライブウェイ。名神高速関ケ原ICから約10分でゲートに着く。ここから標高1260mの山頂駐車場まで17㎞の自動車専用道路がつづく。初夏の照り映える緑の中を、大小の愉しいコーナーが連続する。ヘアピンカーブのように深くて傾斜の大きいコーナーはあまりないため、パドルシフトを使って2速、3速を切り替えながら、小気味よく登ることができた。
心地よい涼風が吹く山頂駐車場から標高1377mの頂上までは3つの登山コースがあり、その沿道では種々の高山植物が可憐な花を咲かせて旅人を迎えてくれた。眼下にはこれから赴く琵琶湖が静かな湖面を光らせていた。
爽快なドライブを愉しめる伊吹山ドライブウェイのレガシィB4。
伊吹山を降りて、国道365号〜県道を経て国道21号へ。途中梅花藻が咲く清流が流れる醒井宿を経て米原へ抜け、琵琶湖に到着。湖岸の道を南下する。市街地を過ぎれば信号機も少なく、左手には田畑や果樹園、右手には湖を眺めながらの快適なツーリングを愉しむことができる。
旧中山道の風情を残す醒井宿では清流の中に梅花藻が咲いている。
ビワコ・ドーターズは、湖岸道路から少し内陸側に入ったところにある小さなお店だ。鮒ずしを熟成させるための樽を置いていた小屋を改装して昨年の11月にオープンした。舟を模して作った陳列台で売られているのは、琵琶湖で獲れた魚を使った加工食品。この地の郷土料理として知られる鮒ずしをはじめ、鮎煮、もろこの酢漬け、鯉の筒炊き等、伝統的なものはもちろんのこと、鮒ずしサンドや琵琶湖のピザといった、ユニークな新作もラインアップしている。
インテリアやデザインに気を配ったBIWAKO DAUGHTERS。
お店のマネージャーとして、こうした新商品をプロデュースしたり、つい手に取りたくなる可愛らしいパッケージを考えたりしているのが、中川知美さん。
「ここは私の生家なのですが、祖父母の代から、父母、私と三代にわたって漁業を営み、獲って来た魚を加工、販売してきました。従来は地元のお客様がメインでしたが、若い方や遠方から来られる方にも湖魚の美味しさと琵琶湖の伝統を知って欲しい、という想いでこのお店をオープンしました」
“琵琶湖の娘たち”という意味の印象的な店名にはそんな想いが込められていたのだ。
"中川知美さん。
臭いが苦手という方でも食べやすいようにと、中川さんのお父さんが15年かけて臭い控えめの鮒ずしを完成。
山の谷水で身を締め、
臭みを抜いた逢坂山かねよのうなぎ
奥湖岸道路を南下し、近江大橋を渡って大津市に入ると、周囲の景観はグッと都会的になる。次の目的地は京都と滋賀との県境にある逢坂山だ。古代の関所が置かれたこの山にも、清水によって育まれたここだけの味があった。
浜大津の駅前周辺では路面電車ではなく、普通の電車が道路を走っていてびっくり!
国道1号を京都方向に走り逢坂山関址のある信号を右手に入ると、旧東海道の風情となり、香ばしい香りが漂ってくる。ここで鰻料理店を営んでいる“逢坂山かねよ”から立ち上っている鰻を焼く煙の香りだ。常務の村田章太郎さんに話を聞いた。
“モノ造りの気持ちを大切に一品一品を
ていねいに仕上げている”という村田さん。
「江戸末期、ここに京を往復する旅人を相手にする茶屋があったんです。そこでは音羽山の谷水が流れていて、鰻を運ぶ行商人の若者が休憩がてらいつもその水で鰻を休ませていました。その水を使うと鰻の臭みが抜けて身が締まることに気付いた若者は、後に茶屋の娘を妻に迎え、明治5年にここで鰻屋を開業したんです」。
逢坂山かねよ本店の緑豊かな庭園内を流れている谷水。
豊富な谷水がうなぎの身を引き締める。
谷水は今もかねよの庭園内を流れており、鯉(こちらも料理として出される)と籠に入れられた鰻が浸されていた。入荷した鰻は、谷水の中で3〜7日間生かされ、身の締まり具合を見て最高の状態になった時点で客に供される。
身の締まり具合に合わせて皮のパリっとした食感を残して焼き上げる蒲焼。
腹開きで蒸さずに焼いた蒲焼は、ご飯の湯気でほんのりと蒸されて膳に運ばれる頃にはちょうど良い食感となる。この丼の上に、玉子3個分の特大だし巻き玉子をドンと乗せた“きんし丼”は、かねよの人気メニュー。アツアツの玉子をフーフー冷ましながらいただくと、下から甘味控えめのタレで焼いたしっかりした食感の蒲焼が現れ、まさにここでしか味わえない逸品となっていた。食後もフレッシュな山椒の爽やかな香りが、口中に心地よい余韻として広がっていた。
特製の大型玉子焼き器で薄く伸ばした玉子を
何度も巻いて仕上げる出汁巻き玉子。
今月のルート
伊吹山ドライブウェイ〜醒井宿資料館
〜BIWAKO DAUGHTERS〜かねよ
逢坂山かねよ
滋賀県大津市大谷町23-15
TEL:077-524-2222
営業時間:11時〜20時
定休日:本店 木曜日 レストラン 火曜日 (月に一度、不定期に休業日あり)
http://www.kaneyo.in/
伊吹山ドライブウェイ
営業時間:
7月 第3土曜日〜8月 3時〜21時
9月 8時〜20時
10月〜11月 最終日曜日 8時〜19時
4月 第3土曜日〜7月 第3土曜日の前日 8時〜20時
利用料金:軽・普通自動車 3,090円
BIWAKO DAUGHTERS
滋賀県野洲市菖蒲230
TEL:077-589-3939
定休日:水曜日
http://www.biwakodaughters.jp/
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