Touring with SUBARU
茶摘み体験からはじまる
お茶づくしドライブ
静岡県牧之原市〜島田市〜静岡市
「夏も近づく八十八夜♪〜」。『茶摘』のメロディが今にも聞こえてきそうな、一面の茶畑が広がる牧之原大茶園。八十八夜にあたる新茶の時期(例年5月2日頃)はとうに過ぎてしまったけれど、青々と光り輝く茶畑では、茶摘み体験ができるところもある。茶娘衣裳で手摘みを楽しんだら、冷茶で一服。今年オープンしたお茶専門のミュージアムで学んだり、濃厚な抹茶スイーツに癒されたり。富士の裾野でお茶づくしのドライブを満喫した。
茶娘に変身して
本気の茶摘み体験
全国の約4割の生産量を誇る、日本一のお茶の生産地・静岡県。川根、天竜、本山といった山間部とは対照的に、牧之原周辺は平坦な台地で栽培されている。牧之原台地の開墾は明治維新の頃に遡り、徳川家旧幕臣などにより進められ今に至る。今回は、ダークブルー・パールのLEGACY OUTBACKに乗り込み、一路、牧之原へ。新茶のシーズンは過ぎたものの、10月上旬まで茶摘み体験ができるスポットがあり、しかも茶娘の衣裳がレンタルできるとあって期待が膨らんだ。
東名高速道路相良牧之原ICを下り、国道473号を南下すると茶畑に囲まれて「グリンピア牧之原」が現れた。受付を済ませ、早速着付け室へ。着物に前掛け程度の衣裳かと思いきや、手甲[てっこう]に脚絆[きゃはん]、たすきまで着けるという本格的なもの。腰籠を携えていざ出陣! 茶畑ではスタッフの石川祐士さんが茶摘みを指導してくれた。「『一芯二葉』といって、細い新芽と両脇の茶葉を一度に摘み取ります。今は機械摘みが主流ですが、一番茶の初めは手摘みで行ないます」と話す。茶葉を触ると思いのほか柔らかい。そして摘むたびに生葉の青くさい香りが立ちこめ、口にすると苦みが感じられる。取材時は二番茶の摘み取り前だったが、一番茶は萌黄色で生葉にはほんのり甘みがあるとか。「ここ牧之原は海抜150mほどの台地で日照時間が長く、朝霧が発生するのでお茶の栽培に適しています。この辺りでは“深蒸し”という、通常の2倍程度の時間をかけて蒸す製法が用いられ、茶葉の甘みと深み、濃い水色[すいしょく]が特徴です」と石川さん。
茶摘みを終え、「逸品館」で自社工場で製茶されたお茶を試飲させていただく。深蒸し茶の朝比奈原をはじめ、香ばしい風味の水出し冷茶や、ベルガモットの香る緑茶のアールグレイが乾いた喉を潤してくれた。こちらではグループ会社・藤枝市の「丸七製茶」の直営店「ななや」の抹茶ジェラートも販売。抹茶は7段階、ほうじ茶は4段階の濃さが用意され、違いを楽しむのも良さそうだ。
美味しいお茶を存分に味わった後は、大井川西岸の牧之原台地に広がる、約5000haに及ぶ牧之原大茶園をドライブ。茶畑に畝[うね]が整然と並ぶ広大な茶園の中を、道路や農道が縦横に走る独特の景観がどこまでも続く。青々としたグリーン一色の茶畑に囲まれて走るのは、実に爽快!国道473号を北上した島田市金谷周辺は見晴らしの良い場所が多く、茶畑の向こうに、大井川と島田市街の街並み、駿河湾が広がり、山々の奥にはうっすらと富士山が見えた。夏場の日中は霞んでしまう日が多く、富士山に出会える確率はわずか。早朝が狙い目だそうだ。
お茶を学び
お茶スイーツを食べ比べ
翌日は今年3月に開館した「ふじのくに茶の都ミュージアム」でお茶を学ぶ。目玉となる博物館の3階は世界のお茶がテーマの常設展示室。中国、トルコ、チベットの喫茶空間が再現され、外国の喫茶文化が体感できる。月替わりで海外のお茶のデモンストレーションが行なわれ、その国の茶器を使った実演と試飲が楽しめるのがユニーク。2階は日本のお茶と静岡のお茶がテーマ。静岡の手揉みの技や世界農業遺産に認定された「茶草場農法」の紹介などに加え、気になる症状からおすすめのお茶を提案してもらうデジタルコーナーもあり、お茶の幅広い知識を深めることができた。
お茶づくしドライブの締めくくりは、お待ちかねのお茶スイーツ。東名高速道路静岡ICから約15分、市の中心部、駿府城公園にも近い茶町にお目当ての店はある。茶町は、徳川家康による駿府96カ町の町割により茶商が集められたのが起源で、清水港からお茶の輸出が始まり大きく発展したそう。現在も茶町界隈には100軒ほどの製茶問屋が立ち並ぶ。茶町通りの「茶町KINZABURO」は創業百余年の製茶問屋「前田金三郎商店」の直営店。自社製の抹茶やほうじ茶を使ったスイーツを販売するほか、2階では11種の無料のお茶とともにイートインできる。まずは夏の風物詩、抹茶かき氷を。抹茶の濃さによって3段階あるうちの2番目、濃厚抹茶シロップの上に抹茶がかかる特濃抹茶かき氷をいただく。抹茶の濃さに圧倒されたが、苦みの中に感じるほのかな甘みが絶妙。わらび餅や小豆、白玉を包んだあんこ玉、バニラアイスも隠れていて食べ応え十分!氷はなるべく高い温度でかいているとのことで口当たりもよく、あっという間に完食した。次に名物の「茶っふる」を注文。店主の母のお手製ワッフルをヒントに考案されたそうで、ふわふわ生地に静岡各地のお茶を使ったクリームが挟んである。「香り高い川根茶には粒あん、濃厚な本山茶には鹿の子、優しい味の岡部茶には生クリーム&カスタードという風に、産地ごとの茶葉の特徴を活かした配合のクリームに仕上げました」と店主で日本茶インストラクターでもある前田冨佐男さん。店主のブレンドしたお茶とも相性抜群だ。
お茶の生産地から始まった今回の旅。生産地となった背景や歴史、製法などを学ぶうち、丁寧に淹れて味わうお茶の大切さや、静岡茶の奥深さに改めて気づかされた。
今月のルート
グリンピア牧之原〜
ふじのくに茶の都ミュージアム〜
茶町KINZABURO
今月の紹介ポイント
グリンピア牧之原
静岡県牧之原市西萩間1151
TEL:0548-27-2995
営業時間:10:00〜17:00
(茶摘み体験は4月下旬〜10月上旬の11:00〜11:30)
<土日・祝日は11:00〜11:30、14:00〜14:30>
※要問合せ。雨天の場合、茶摘み体験は中止
定休日:年末年始
茶摘み体験料:大人820円
※お土産付き、茶娘衣裳レンタル880円(要事前予約)
http://grinpia.com
ふじのくに茶の都
ミュージアム
静岡県島田市金谷富士見町3053-2
TEL:0547-46-5588
営業時間:9:00〜17:00(入館は〜16:30)
※茶室は9:30〜16:00(入館は〜15:30)
休館日:火曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
※臨時開館・休館する場合あり
常設展・茶室観覧料:一般(15歳以上)300円
(茶道体験は別途500円、ほか体験は内容により異なる)
https://tea-museum.jp/
茶町KINZABURO
静岡県静岡市葵区土太夫町27
TEL:054-252-2476
営業時間:9:30〜18:00
(日曜、祝日10:00〜17:00)
※2階イートインスペースは〜17:00
定休日:水曜、夏季・年始
http://kinzaburo.com
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