デジタル技術でコト（体験価値）を
ご提供するプロジェクト

SUBARUは2017年にIT戦略本部を設置し、翌年SUBARUならではのデジタルトランスフォーメーションを推進するためのプロジェクトチームを作りました。長い討議を経て2つのプロジェクトが動き出しました。ひとつはクルマづくりの品質を向上するためのデジタル技術の活用。もうひとつが「つながる技術」や「データ」を活用した、外部パートナーとの新たなお客様価値の協創。その第一弾がお客様に新しいドライブ体験をご提供するSUBAROADです。

SUBAROADは最初からその具体像が定まっていた訳ではありません。当初目指したのは、SUBARUのクルマとしての機能価値の先にある、お客様の体験価値・情緒価値を高めることでした。そのヒントを得るために、SUBARUを気に入って選んでいただいているお客様へ “SUBARUに乗っていて良かったと感じた時”と“SUBARUでどんなドライブを愉しんでいるのか”をお伺いし、語っていただきました。

その結果、多くの方に共通していたのは、「お客様がドライブに求めている情緒価値とSUBARU車の機能価値が重なる瞬間があり、それを機にSUBARU車への愛着が高まっていくこと」でした。具体的には“長距離を運転しても疲れない”“雪道や悪天候下でも安心”“ワインディングロードでの応答性が良い”といった体験です。このような体験をより多くのお客様にご提供することはできないだろうか？ と考えたのが始まりでした。

カーナビでは味わえない遠回りのルート

お客様の話を伺う過程で、非常に印象に残るご意見をいただきました。それは「少しでも長い時間運転していたいから目的地までわざと遠回りをする」「目的地に近づいたらカーナビの推奨ルートから一本外れた道へ入る。そこにはその土地ならではの風景が広がっていて新しい発見があるから」というコメントでした。

効率ばかりが要求される世の中にあって、心が解放される、何かに夢中になれる瞬間って、案外非効率的なことをしている時が多いということに気づかされました。そして、このような考えを他のお客様にもお話ししたところ、大変多くの共感をいただきました。

そこでこうしたお客様との対話をもとに、“目的地に向かって効率の良いルートを案内する従来のカーナビでは実現できない、SUBARUならではのドライブ体験を愛車と共に愉しんでいただく”というSUBAROADのコンセプトができ上がったのです。

IT戦略本部　副本部長　齊藤 一隆

エンジニアから見たSUBAROADの可能性

私はもともと技術本部のエンジニアですが、2019年秋にデジタルイノベーション推進部に兼任で赴任しました。それまで“いいクルマを造ることでお客様の期待に応える”ことが私にとって最も重要な任務だと考えてきましたが、100年に1度と言われる自動車産業の大変革期にあって、漠然とそれだけで十分なのだろうか？ という思いがありました。デジタルイノベーション推進部に赴任して“お客様の体験価値を高める”という発想に基づいたSUBAROADのプロジェクトを知り、これからもSUBARUが輝き続けるためには新しいことにチャレンジし、変わらなければならないと実感しました。

そして、お客様に向けては、SUBAROADを使っていただくことで、SUBARUが追求し続けている機能価値とお客様の求める体験価値・情緒価値を結びつけ、よりSUBARUを好きになってもらいたいという思いで作ってきました。SUBAROADには、位置情報に合わせて音声をお届けする機能があります。走行中に視界の良さやステアリング応答性の良さなどを体感できるポイントを音声でお伝えすることで、SUBARUが持つ機能価値をお客様にダイレクトに味わっていただくことができます。それだけでなく、走っている土地の由来や近隣の観光情報のご案内、出発の時など各シーンで聴きたいお気に入りの楽曲をドライブ中にタイミング良く流す機能など、スタートからゴールまでエモーショナルなドライブ体験ができる様々な仕掛けをご用意しました。

SUBAROADをコミュニケーションツールに

SUBAROADがお客様と弊社とのコミュニケーションツールのひとつになることを狙っています。SUBAROADは、お客様とのコミュニケーションを活性化し、さらに結びつきを強くしていくことができると信じています。また、SNSにレビュー等をアップしていただくことでお客様同士のコミュニケーションも広がります。その中から“自分ならこんな道を知っている”といったルート提案も出てくるかもしれません。お客様に加えて全国のSUBARU販売店のスタッフやSUBAROADのコンセプトに共感いただいた自治体や協業パートナーなど、弊社に関わってくださるすべての人が一緒になってSUBAROADを盛り上げていきたいと思います。SUBAROADを通してコミュニケーションしていくことで、私たちエンジニアのクルマづくりの視点も“いいクルマを造ること”に“いい体験をご提供するためのクルマを造ること”が加われば、SUBARUはこれからも輝き続ける存在になれると思います。

ぜひ、SUBARUが考える、新たなドライブ体験をお愉しみください。

IT戦略本部　デジタルイノベーション推進部主査　佐々木 礼