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ポピー畑とインプレッサG4 1.6i-S EyeSight。
SUBARU on the Road
春と夏の合間で
奈良県桜井市〜明日香村〜吉野町
ポピー畑とインプレッサG4 1.6i-S EyeSight。
春らしい空気の中に、時折夏日も紛れ込むようになるこの季節。春を満喫しつつ、ちょっと夏気分も先取りしてみようと思い出かけたのは奈良県。奈良というと多くの方が思い浮かべるであろう「東大寺」や「春日大社」などは、南北に長い奈良県のかなり北のほう。今回はもう少しディープに、ちょうど奈良県中央あたりをドライブしてみることにした。
取材は緊急事態宣言が出される前に行なっています。そのため、取材先の施設の営業状況に変更が出ております。
あらかじめ、ご了承いただけますようお願いいたします。
1400年前の春と夏に
思いを馳せる
奈良といえばお馴染みの「東大寺」や「春日大社」がある奈良市から、南に向かってインプレッサG4で走り出す。春の空というよりは夏の終わりから秋にかけての高い青空のようなクォーツブルー・パールのボディカラーだ。
春の陽気のせいかもしれないが、奈良の自然はなんと言うか、まろやかで穏やかで人を包み込むような印象だ。それとも、周囲が公園になっている遺跡が多く、そこで人々が思い思いに憩う様子が頻繁に見られるからだろうか。「のどか」という言葉がしっくりくる。
桜井市に入り、国道169号を走っていくと大きな鳥居が見えてくる。日本最古の神社と言われる大神神社[おおみわじんじゃ]の大鳥居だ。高さ32.2メートル、柱間23メートルの鳥居の下をクルマで通りすぎる。車道をまたぐ鳥居としては日本一だそうだ。神社の裏にある三輪山を御神体としている神社だ。
大神神社へのお参り帰りに訪ねたのが大神神社二の鳥居横にある「そうめん處 森正」。実はこの辺りは、そうめんの発祥の地とされている。今から、1200年余り前のこと、大神神社の神主大神狭井久佐[おおみわのさいくさ]の次男穀主[たねぬし]が飢饉と疫病に苦しむ民の救済を祈願したところ、神の啓示を賜って、小麦粉栽培を始めたことからそうめん作りが始まったのだという。そうめんというと、揖保乃糸で有名な兵庫や小豆島あたりが思い浮かぶが、それはここ奈良県から伝わっていったのだそうだ。
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築100年の民家の庭先でそうめんをいただく。
築100年の民家を改修した「そうめん處 森正」では、そうめんや奈良の名物「柿の葉寿司」などがいただける。氷が添えられた冷やしそうめんは見た目も涼しく、さっそく夏を先取りできる。つるつるとした食感と歯ごたえのあるコシ、細い麺の繊細な舌触り。驚いたのは、撮影をしていて少し時間が経ってしまったにゅうめん(温かい汁に浸ったそうめん)がほとんど伸びていなかったことだ。つるつるとした食感と歯ごたえがしっかり残っていた。
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涼しげな冷やしそうめん。肌寒い日にはにゅうめんもおすすめ。
桜井市を後にして、明日香村に向かってもう少し南下する。文化庁の統計によると奈良県に現存する古墳の数は8400余り。クルマで走っていても、あちこちに古墳らしき小山や看板が目に入る。しまいには、小山や丘を見るとどれも「古墳か?」と思えてくる。
明日香村には、聖徳太子の出生地とされる橘寺や教科書で必ず目にする極彩色の壁画で有名な高松塚古墳がある。今回は同時期に造られたとされ、同じように壁画が残っているキトラ古墳とその史料を展示するキトラ古墳壁画体験館 四神の館を訪ねてみた。キトラ古墳は7世紀末~8世紀初め頃に造られたと推測されている。こんもりと丸い円墳だ。中の壁画は、年に数回の特別公開時以外は見ることができないが、地階では、原寸大の石室模型や高精細映像で壁画を見ることができる。この中に埋葬されていた人物が誰なのかは判明していない。奈良を旅していると、こうして現存している多くの遺跡に刺激され、学生時代にはさらりと通り過ぎてしまった古代史に俄然興味が湧いてくる。歴史が単なる文献上のものではなく、自分の生きている現実の中に立ち上がってくるような感覚があるのだ。日常的にそんな土地に暮らしている奈良の人達が羨ましくなる。
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原寸大の石室内部には、壁画が再現されている。石室模型の内部に入れるのは館内ツアー時のみ。
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映像と展示で石室内の壁画を再現している。上に見えるのは天井に描かれた星図。
春の真っ只中で、
夏の気配を探す
キトラ古墳から、棚田が広がる祝戸地区あたりをドライブする。この辺りは道が狭く見通しの利かない所もあるので、運転には注意が必要だ。
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稲渕の棚田の合間を走るインプレッサG4 1.6i-S EyeSight。
夕暮れ時、国営飛鳥歴史公園の甘樫丘展望台に登ってみた。ここは7世紀前期、時の有力者蘇我蝦夷[そがのえみし]・入鹿[いるか]親子が大邸宅を構えていた場所と言われており、明日香村や藤原京があった橿原市を眺めることができる。夕日の中を家に向かっているだろうクルマの列や公園で犬の散歩をする人。1400年前とは全く違う風景だろうが、一日の終わりに家路を急いだり、寛いだり、そういう日々の営みがずっとずっと続いてきたことと、そこにいる人の、家族や生活を大切にする気持ちは意外とそんなに変わらないのではという思いにさせられる夕焼けだった。
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甘樫丘から見る夕日。
橿原に一泊し、翌日は日本最初の厄除け寺と言われる岡寺を訪ねる。ぜひ見ていただきたいのは、塑像(粘土でできた像)としては日本最大の仏様である御本尊と天竺牡丹(ダリア)を浮かべた花手水[はなてみず](岡寺では手水を「てみず」と読むのだそう)。岡寺は別名「花の寺」とも呼ばれ四季折々の花や紅葉が美しい寺なのだ。ダリアは夏から秋にかけての花なので、ここでも夏気分をと思ったのだが、取材時には残念ながら花手水はなかった。大らかで優しそうな仏様に交通安全と無事に取材を終えられることをお祈りして岡寺を後にした。
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「花の寺」の別名もある岡寺。
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岡寺の花手水。(写真提供:岡寺)
奈良らしい春を味わおうと、あすかいちご狩りパークを訪ねてみる。30分食べ放題のいちごは奈良県原産の「あすかルビー」という品種だ。近県で消費されてしまうため、あまり全国には流通していないのだそう。丸みを帯びた大きな実は宝石のようにつやつやしているが、表面はかなり繊細。噛んでみると水分の多さに驚く。美味しそうな赤い宝石を探しては頬張る。嗅覚でも視覚でも、そして味覚でも春を満喫だ。
※あすかいちご狩りパークは、新型コロナウイルス感染拡大防止に万全を期すため4月8日をもちまして、2020年の営業を終了しました。
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あすかルビーを味わう。
明日香村からさらに南へ、吉野に向けてクルマを走らせる。お目当ては吉野地方の山に自生する吉野本葛を使った葛菓子だ。TSUJIMURAは、吉野の下千本から中千本に至るメイン路地沿いにある。食べ比べてみたかったので「くずもち」と「くずきり」両方を頼んだ。出てきたお菓子は透明に透き通って美しいことこの上ない。くずもちの方がねっとりと柔らかい食感。くずきりはよりつるんとした舌触りで噛み応えがあるところが愉しい。透明な葛菓子はみるみるうちに白っぽく半透明になっていく。この食感と見た目はここでなければ味わえないのだ。店主の辻󠄀村佳則さんが「吉野山の初夏は新緑の薫りがして気持ちいいですよ」と教えてくれた。
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透き通ったくずきりは、注文してから作るもの。
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店主の辻󠄀村佳則さん。
吉野を後にし、春らしい空気の中を奈良市に向けてドライブしながら、夏には日本が穏やかさを取り戻しているといいと心から願った。
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吉野の桜とインプレッサG4 1.6i-S EyeSight。
今月のルート
そうめん處 森正〜
キトラ古墳壁画体験館 四神の館〜
甘樫丘〜岡寺〜
あすかいちご狩りパーク〜TSUJIMURA
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今月の紹介ポイント
そうめん處 森正
奈良県桜井市三輪535
TEL:0744-43-7411
営業時間:平日10:00~16:30
土日祝日9:30~17:00
(状況により早く閉める場合あり)
定休日:火曜・月曜(不定休)
キトラ古墳壁画体験館 四神の館
奈良県高市郡明日香村大字阿部山67
TEL:0744-54-5105
開館時間:9:30~17:00
(12月~2月は9:30~16:30)
https://www.asuka-park.go.jp/area/kitora/
midokoro/#midokoro01
岡寺(東光山真珠院龍蓋寺)
奈良県高市郡明日香村岡806
TEL:0744-54-2007
入山時間:8:00~17:00
(12月~2月 8:00~16:30)
http://www.okadera3307.com/
葛の御菓子TSUJIMURA
奈良県吉野郡吉野町吉野山950
TEL:0746-32-3032
定休日:月により変動あり、HPで要確認
http://tsujimura-yoshino.com
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。
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