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北山崎の南約10kmほどの、島越地区にある島の越漁港からの眺め。ここから北山崎断崖を海から眺望する遊覧船が出ている。 Photographs●岡本淑
SUBARU on the Road
絶景&美食を堪能する三陸の秋
宮城県南三陸町~岩手県田野畑村
北山崎の南約10kmほどの、島越地区にある島の越漁港からの眺め。ここから北山崎断崖を海から眺望する遊覧船が出ている。 Photographs●岡本淑
今月は、仙台を起点に秋色に染まり始めた三陸海岸を北上。宮城県南三陸町、気仙沼を経て、高さ200mの断崖が連なる岩手県田野畑村にある景勝地・北山崎をめざす片道約300kmのロングツーリングに出かけた。旅の相棒はマグネタイトグレー・メタリックのフォレスターAdvance。距離はあるものの、EyeSightの全車速追従機能付クルーズコントロールを使い、昨年12月に仙台から青森県八戸市までが全通した三陸道(三陸沿岸道路)を巡航するドライブはこの上なく快適だった。
ここでしか味わえない
秋の味覚
仙台を出発して約1時間30分。三陸道の志津川ICを降りて5分ほど走ると南三陸さんさん商店街に着く。木造一階建ての長屋風の建物6棟に飲食店や土産物店など28店舗が入り、建物の間には広々とした休憩エリアが設けられた賑わいを感じさせるスペースだ。
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気仙沼の東にある大島からの眺め。
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南三陸さんさん商店街。右側には店舗棟が3棟ならび、写真左側のフリースペース“さんさんコート”を挟んだ奥にさらに店舗棟が3棟ある。
正面の建物は10月1日オープン予定の“南三陸311メモリアル”
「震災の翌年2012年2月に被災した町内のお店が集って仮設商店街としてオープンし、2017年の3月3日に今の形で本設オープンしました。震災の前は商店街としてまとまっていなかった店舗がここで集合体になったことで来店されるお客様が増え、今年8月には来場者300万人を達成しました」
そう話してくれたのは、志津川町で生まれ育った佐藤潤也さん。震災時には町内のホテルに勤務していたが、震災で家を失って避難所暮らしをしていたとき、大好きな町の未来のために何かしたいと思い立ち、2015年に復興応援隊に加わり、現在は商店街に事務所を置く南三陸まちづくり未来に勤務して、地域の人たちと協力しながら町の活性化や情報発信を行なっている。
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志津川に生まれ育ち、この地をこよなく愛している佐藤潤也さん。
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南三陸さんさん商店街から川の対岸にある南三陸町震災復興祈念公園を望む。
震災時の写真と比較すると、現在は約10m嵩上げされていることがわかる。
「この町の魅力は、第一に海産物が美味しいこと。中でも昔から“西の明石、東の志津川”と称されてきたタコは、ここに来たら是非味わっていただきたいです。これからの季節は秋鮭も美味しいですよ」
ということで、さっそく商店街の中に店舗を構える弁慶鮨さんののれんを潜ることにした。同店は菅原実さんが1983年に志津川の町で創業した。震災で店舗を失い、一時は休業して菅原さんのご家族は埼玉で暮らしていたのだが、さんさん商店街がオープンすると知りこの町に戻って店舗を再開した。秋から冬の間の季節限定メニューとして人気が高いさんこめしは、3年前に二代目の菅原賢さんが考案した。地元名産のタコに穴子と秋鮭のはらこ(イクラ)を合わせた、ここでしか味わえない逸品だ。
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南三陸さんさん商店街の一角に店を構える弁慶鮨。さんこめし(写真上)は、残った穴子の煮汁で炊いて作っていた賄い飯のご飯をベースに秋冬の旬の味覚を合わせて作った菅原賢さん(写真左下)のオリジナルメニュー。
土地の記憶・風を感じて
海沿いを走り南三陸海岸ICから再び三陸道へ。30分ほどで気仙沼中央ICを降り、町を抜けて小高い丘の上にあるユニークな建造物を訪れた。
「リアス・アーク美術館は、三陸のリアス式海岸のリアスと、方舟を意味するアークを組み合わせたネーミングです。建物は山の頂に漂着した宇宙船をイメージしたもので、外壁のアルミパネルや鉄の造形には、地元気仙沼の造船屋さんの技術が用いられています」
と、山内宏泰館長が説明してくれた。山内さんは1994年の開館時から学芸員として同館の運営に携わってきた。エントランスは建物の2階にあり、その奥の展示スペースでは、主に東北、北海道在住のアーティストの作品を集めた美術作品の展示と、歴史・民俗資料を常設展示した“方舟日記”がある。方舟日記は、この土地に栄えた豊かな魚食文化を軸に構成されており、展示物が実際にどのように利用されていたのかが一目で分かるイラストパネルによって解りやすく楽しく展示を見ることができる。
「地域の歴史や生活文化を知ることで、そこで生まれた芸術の意味をより深く理解することができます。その意味で、方舟日記は当館の基幹展示です」
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船をイメージした館内。アルミ合金と漆喰が混在している。
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主に東北・北海道在住の作家の美術作品を展示。
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歴史・民俗資料を展示した“方舟日記”。
山内さんの言葉の端々から、この土地への強い思いが感じられる。2011年の震災で館も大きなダメージを受け、2年間休館を余儀なくされた。その間、山内さんは館のスタッフと共に毎日のように災害被害の実態を記録、調査してきた。その際に撮影した写真3万点、収集した被災物は250点。館の1階では現在その一部を常設展示している。
「私たちの役割は単に記録資料を残すことではなく、それを正しく伝えることです。そのためには伝える意志と伝わる表現が必要です。これまで美術館として蓄積してきたノウハウを駆使し、多様な視点で東日本大震災を表現することに努めました」
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1階の常設展示“東日本大震災の記録と津波の災害史”。展示されている「被災物」という言葉は、この展示のために山内館長が作った表現だ。
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山内宏泰館長は、気仙沼市復興祈念公園のプロジェクトにも関わっている。
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この後、気仙沼に来たらぜひ訪れてほしいと山内さんに薦められた場所、気仙沼市復興祈念公園を訪れてから、さらに北を目指してフォレスターに乗り込んだ。
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園内には東日本大震災で起きた事実や教訓を普遍的に語り継ぐための「伝承のオブジェ」が設置されている。写真は、気仙沼湾からの風を受けながら、海へと祈りを捧げる作品「海へ」。
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気仙沼市街地に近い「陣山」に造られた「気仙沼市復興祈念公園」。
公園の最頂部には復興祈念のシンボル「祈りの帆(セイル)」がある。

気仙沼市からさらに2時間30分ほど北上した岩手県田野畑村の北山崎は、高さ200mの断崖が約8kmにわたって連なる景勝地。
写真は北山崎ビジターセンターから約10分、363段の階段を下ったところにある第二展望台からの眺望。
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北山崎のさらに北、黒崎園地内にある「北緯40度シンボル塔」。
正面に立つと地球儀がゆっくりと回転する。
今月のルート
南三陸さんさん商店街~弁慶鮨
~リアス・アーク美術館
~気仙沼市復興祈念公園~北山崎~黒崎園地
今月の紹介ポイント
南三陸さんさん商店街
宮城県本吉郡南三陸町
志津川字五日町201-5
お問い合わせ先:0226-25-8903
営業時間:9:00〜17:00
https://www.sansan-minamisanriku.com
弁慶鮨
さんさん商店街E棟−1
(住所はさんさん商店街と同じ)
TEL:0226-46-5141
営業時間:11:00〜15:00(LO 14:20)
17:00〜21:00(LO 20:30)
定休日:木曜日(水曜日はランチのみ営業)
リアス・アーク美術館
宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5
TEL:0226-24-1611
開館時間:9:30〜17:00(最終入館16:30)
休館日:月・火・祝日の翌日(土日を除く)
年末年始:メンテナンス休館
観覧料:常設展:一般700円 大学・専門学生600円
高校生500円 小・中学生350円
企画展は展覧会ごとに設定。
※学芸員のアテンドをご希望の場合はご予約ください。
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
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