カートピア10月号で訪れた富山県富山市の風景

Touring with SUBARU

やわらかく五感を
ひらく、秋。
富山アートめぐり

富山県富山市/高岡市

いつのまに、すっかり空気は秋のものになってきた。深まる秋の気配の中、今月も旅に出る。向かう先は富山。北陸新幹線が開通し、北陸地域の観光情報が多く見聞きされるようになり、富山県の伝統工芸も頻繁に取り上げられている。アクセスが良くなったのは鉄道の話で、関東からクルマで行く分には以前とさほど変わらないのだが、ちょうどタイミングよく富山県美術館が全面開館したこともあり、今月は富山市・高岡市でアートめぐりの旅をすることにした。

みる、きく、さわる。
アートと伝統工芸を体験する。


通過地点としてではなく目的地として初めて訪れた富山市は洗練された都市の顔をしていた。富岩運河環水公園を横目で眺めながらインプレッサを走らせる。8月、この富岩運河環水公園内に新しい美術館が全面開館した。富山県立近代美術館を前身とする富山県美術館だ。

富山県美術館の外観とインプレッサSPORT。

富山県美術館の外観とインプレッサSPORT。

美術館が建った場所には、もともと「ふわふわドーム」という遊具があり、子どもたちの遊び場として人気だったのだそう。この「ふわふわ」という擬態語にヒントを得て作られたのが、美術館の屋上にある「オノマトペの屋上」。従来からの「ふわふわドーム」のほか、「ぐるぐる」「ひそひそ」などオノマトペ(擬態語・擬音語)を名前にした遊具が設置されていて、日暮れまで子どもたちが駆け回っている。

富山県美術館のオノマトペの屋上。
富山県美術館のオノマトペの屋上。

富山県美術館のオノマトペの屋上。

美術館では、企画展やコレクション展でアート作品を展示するだけでなく、サブタイトルとしてアート&デザインと銘打つとおり、ポスターや椅子などデザイン分野の展示も豊富だ。またワークショップやオープンラボでのプログラムも盛んに行なわれていて、特にオープンラボでは予約なしで参加できるプログラムもある。誰でも、ちょっとした創作体験ができるプログラムが開かれている。

富山市からインプレッサを小1時間走らせ、高岡市に向かう。立山連峰を遠く眺めながら市街地を抜けると、両側には田んぼが広がる。目指すのは、明治期に建てられた土蔵造りの商家や民家が立ち並ぶ「山町筋」だ。

土蔵造りの建物の中に、レンガ造りの洋風な建物も混在する「山町筋」は「レトロ」という形容詞がぴったりだ。複合施設「はんぶんこ」は、その一角にある。建物は江戸時代から続く金物店をリノベーションしたもので、セレクトショップ、図書室、自習室、FABスペースという3つの顔を持つ。

「はんぶんこ」では1、2時間で鋳物や螺鈿細工などの伝統工芸のものづくりを体験することができる。鋳物体験では、枠に砂を詰めて型を作り、そこに溶けた錫を流し込む。冷え固まった錫を磨いて仕上げる。「はんぶんこ」では日本各地の職人たちの手による日用品が販売されているが、実際に自分の手で物を作ってみると、それら一つひとつにどれだけの時間と手間がかけられているかが、少しだけわかる。ものづくりの楽しさと職人たちへの敬意を同時に抱く。

*デジタル工作機械などを備え、地域に密着した工作スペースのこと。

SHOP 図書室 図工室「はんぶんこ」。

SHOP 図書室 図工室「はんぶんこ」。

「はんぶんこ」店長の北 文香さん。

「はんぶんこ」店長の北 文香さん。

「はんぶんこ」で作った小鳥のブローチ。

「はんぶんこ」で作った小鳥のブローチ。

枠に砂を詰めてピンクのプラスチック型の形をとる。

枠に砂を詰めてピンクの
プラスチック型の形をとる。

枠を裏返すとこんな感じ。

枠を裏返すとこんな感じ。

⑥のプラスチックを抜いた空洞に溶けた錫を流し込む。

⑥のプラスチックを抜いた空洞に
溶けた錫を流し込む。

あじわう、かおる。
今に受け継がれる伝統を食す。


鋳物体験中に、「はんぶんこ」を訪れた方がいた。「山町筋」と同じく高岡市内にある「金屋町」で、「和香」という日本料理店を営む早川勇人さんだ。せっかくなので、訪ねてみることにした。「金屋町」は高岡鋳物の発祥地で、鋳物職人が多く住んでいた筋。現在も「さまのこ」と呼ばれる千本格子と石畳が特徴的な町並みを作る。

「和香」も古くは鋳物職人の住居兼作業場だった建物の通りに面した住居部分を店舗にしている。明かり取りの付いた天井を見上げると、代々住んできた家族の笑い声が聞こえてきそうだ。そんな天井と早川さんが作業している様子が見えるカウンター席でお料理をいただいた。おそらく早川さん自身が、作ることと、饗することを楽しんでおられると思う。自然とこちらも食事そのものをとことん楽しんでしまう。富山県産のお米や魚、野菜など地元の旬の素材を使った、目にも楽しいお料理は、身体だけでなく、心にもしみじみと美味しい。お腹を満たすために食べる食事、栄養を摂るためだけにする食事とは確実に異なる食事がそこにはある。

「茶寮 和香」の店内と店主早川 勇人さん。

「茶寮 和香」の店内と店主早川 勇人さん。

季節の食材を盛り付けたランチの1品目。

季節の食材を盛り付けたランチの1品目。

お土産を求めに「山町筋」に戻る。創業170余年の大野屋でのお目当ては高岡ラムネ。伝統的な和菓子の木型を使って作られたラムネの素材は富山県産コシヒカリ、それに国産の柚子やイチゴ、梅など。口に入れるとラムネ独特のひんやりと舌の上で崩れていく食感と天然の果物の味が楽しめる。

古いものにただ固執するのではなく、ただ守ろう、残そうとするのでもなく、それに敬意を抱くからこそ、現代の生活の中で生かせる形を考えての今の形。それが伝統的な製法で作られたラムネであったり、鋳物という伝統的な工法で作る現代風のアクセサリーであったり、以前からその場所で子どもたちに愛されていた遊具を生かした富山県美術館の屋上庭園であったりする。

「とこなつ本舗大野屋」外観。

「とこなつ本舗大野屋」外観。

高岡ラムネ。11月までは期間限定商品「秋けしき」も。

高岡ラムネ。
11月までは期間限定商品「秋けしき」も。

大野屋のスタッフのみなさん。一番右が「高岡ラムネ」を商品化した大野 悠さん。

大野屋のスタッフのみなさん。
一番右が「高岡ラムネ」を商品化した大野 悠さん。

雨晴海岸から能登立山シーサイドラインをインプレッサで走りながら考える。発売から25年、昨年5代目へとモデルチェンジしたこのクルマの場合、それは何だろう。エンジニアたちが今の時代に求められる価値の中に大切に昇華させてきたSUBARUの、そしてクルマの価値。海岸沿いのワインディングを丁寧にトレースしながら、その一つは間違いなく「運転する愉しさ」だと思った。

能登立山シーサイドラインを走るインプレッサSPORT。

能登立山シーサイドラインを走るインプレッサSPORT。

今月のルート


富山県美術館〜はんぶんこ〜茶寮和香〜
大野屋 高岡木舟町本店〜雨晴観光駐車場

今月の紹介ポイント


富山県美術館

〒930-0806
富山県富山市木場町3-20
TEL:076-431-2711
開館時間 9:30〜18:00 (入館は17:30まで)
休館日 毎週水曜日(祝日除く) 
*その他、祝日の翌日・年末年始など
◆屋上庭園オノマトペの屋上は8:00〜22:00
(入館は21:30まで)*12/1〜3/15は冬季閉鎖
◆オープンラボやワークショップについてはHPをご確認ください。
http://tad-toyama.jp/

はんぶんこ

〒933-0914
富山県高岡市小馬出町63
TEL:0766-50-9070
https://hanbunko.org/
各種体験は金・土・日曜日。予約はWEBサイトからもできます。

茶寮 和香(さりょう にこか)

〒933-0945
富山県高岡市金屋本町2-26
TEL:0766-75-8529
ランチタイム/11:00〜14:00(L.O.13:30) 
ディナータイム(要予約)/18:00〜22:00(L.O.20:30)
定休日 日曜、祝日
https://www.facebook.com/nicoca25/

大野屋高岡木舟町本店

〒933-0929
富山県高岡市木舟町12
TEL:0766-25-0215
営業時間 8:15〜19:30(日祝8:15〜19:00)
定休日 毎週水曜日(祝日除く)
https://ohnoya.theshop.jp/

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