氷見に近い雨晴海岸にある「道の駅 雨晴」の2階展望デッキからは、氷見線を走る列車と富山湾、立山連峰を一望できる。かつてこの地にあった、ホテル雨晴から眺めた風景を懐かしく思い出した。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子
SUBARU on the Road
春を告げる花と
富山湾の恵みを探して
富山県砺波市〜氷見市〜入善町〜朝日町
氷見に近い雨晴海岸にある「道の駅 雨晴」の2階展望デッキからは、氷見線を走る列車と富山湾、立山連峰を一望できる。かつてこの地にあった、ホテル雨晴から眺めた風景を懐かしく思い出した。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子
桜前線北上中の3月下旬、富山へと出発したフォレスター Advance。暖かい日が続いたせいか、本来4月に見頃を迎える桜や菜の花、チューリップがちらほら花を咲かせていると耳にしたからだ。春先は残雪を抱く立山連峰も美しい季節。さらに3月から富山湾の宝石・ホタルイカ漁も解禁とあって、期待に胸を膨らませながら、北陸自動車道・砺波ICへと急いだ。
県花のチューリップを
一年を通して愛でる
東京からの長距離ドライブにも疲れ知らずの安定した走りが頼もしいフォレスター。北陸自動車道砺波ICから約5分の砺波チューリップ公園では、毎年4月下旬からGWに300品種300万本のチューリップが目を楽しませる「となみチューリップフェア」が開催される。訪れた3月下旬は遮光シートに覆われ、イベント時に開花するよう栽培調整が行われていた。とはいえ、すぐそばのチューリップ四季彩館では開花が観られるという。ガラス張りの施設では甘い香りを放つ春の花々が出迎えてくれた。奥に進むとカラフルな5000本のチューリップが咲き誇る万華鏡のような空間が現れ、思わず息を飲む。ここは世界で唯一、一年中チューリップが咲き続く空間。花壇の周囲を鏡が囲み、無限に広がる花畑に迷い込んだかのよう。いろいろな角度から映え写真を撮っていると時間を忘れる。
全面ガラス張りで自然光がたっぷり降り注ぐ、チューリップ四季彩館の建物。入口手前には、チューリップの球根のモニュメントが設置される。
一年中チューリップが咲き誇る、チューリップ四季彩館の最大の見どころ「パレットガーデン」。壁面のミラー効果で一面のチューリップ畑にいるかのような写真も撮れる。
小ぶりの花がかわいらしい、富山生まれの「黄小町」。促成栽培のため、幸運にも開花時期より前に観ることができた!
次に球根の仕組みやチューリップ伝来の歴史、富山や砺波市での栽培や品種についての展示を見学。大正7(1918)年、国内で初めてチューリップ栽培を始めた砺波市は、球根の出荷量日本一。また富山県は農業試験場や生産農家の研究が盛んで県産の品種は100以上あると知り、驚かされた。帰り際、ピンク色のチューリップソフトクリームで喉を潤し、庄川に沿って富山湾に出て、源義経ゆかりの義経岩が名前の由来となった雨晴海岸を経由し、氷見で宿を取った。
360度チューリップの切り花に囲まれる「チューリップパレス」で幸せな気分に。
球根から開花までのストーリーを映像で紹介している「球根シアター」。
翌朝、まだ眠りから醒めやらぬ静けさの中6時に宿を発ち、氷見漁港へ。こちらは一転して活気に満ちている。2階テラスから見下ろすと、船から下ろされた鮮魚が床に並び、競りにかけられては運び出される。そのいくつかが2階の食堂に運び込まれていくのを見て、吸い寄せられるように入店した。氷見魚市場食堂は氷見漁港で水揚げされた魚介のみを使って魚料理を提供する食堂で、早朝からの営業。まさにきときとが味わえるのだ。この日の氷見浜丼にはメジマグロ、ブリ、スズキ、甘エビがびっしりと。脂がのって身が締まり鮮度の良さを実感。魚のアラやエビの出汁が効いた土鍋の漁師汁も付き、贅沢な朝食となった。
氷見漁港の2階テラスからは活気あふれる朝競りの様子を見学できる。
氷見浜丼やわやわ盛(並盛)1880円は漁師汁、季節の一品、漬物付き。ちょっこし盛(小盛)1580円、はんさ盛(大盛)2480円も用意。
「天然の生簀と呼ばれる富山湾の魚介は絶品」と店長の中田祐義さんは太鼓判を押す。
ホタルイカの神秘にふれ
奇跡の四重奏に出会いに
氷見から高岡の古い街並みを抜けて、フォレスターは国道8号を滑川へと向かう。雲ひとつない青空の下、フロントガラスから左右にはみ出すほどに雪を冠した立山連峰が広がり、その迫力たるや言葉を失うほど。雄大な山並みに向かって進み、ほたるいかミュージアムに到着した。富山湾の滑川周辺はホタルイカが産卵のため春先に戻ってくる海域で、国の特別天然記念物に指定されている。富山湾で漁が解禁となる3月から5月下旬には「ほたるいかの発光ショー」を開催中。定置網にかかるホタルイカが網の刺激を受けて発光するように、特殊水槽の網を揺らし発光の様子を間近で見られる。真っ暗にしたライブシアターで係員が網を揺すると、小さな光があちこちで点灯し始め、神秘的な現象に歓声が上がった。産卵を経て寿命を終えるため捕獲から数日の短い命だが、プールに放たれたホタルイカに素手で触れることができたり、富山湾に生息する深海魚について学んだりできるコーナーも。今年は例年にない不漁に地元も悩まされているというが、併設のカフェやレストランでは瞬間冷凍したホタルイカ料理が通年味わえる。カフェのイチオシが、ほたるいかバーガーと唐揚げ。新メニューの唐揚げは塩味が利いていておやつにも良さそう。
5月下旬まで期間限定で「ほたるいかの発光ショー」を開催。暗闇の中、特殊飼育水槽内で発光する様子を観賞。
ホタルイカを中心に富山湾の深海魚を学べる展示ホール。
隣のカフェではフライを挟んだほたるいかバーガー470円や、ほたるいかの唐揚げ5匹460円を。
ここからは県道1号・国道8号を経由して、入善町の風力発電の風車を目指す。この辺りでは球根の生産が盛んに行われていて、4月上旬から下旬に一面の花畑になるが、水仙やストックに混じってちらほらとチューリップが咲き始めていた。南に雄大な北アルプス、北に日本海の水平線が広がり、爽快な気分に。さらに15分ほど内陸に入ると舟川べりの桜並木が満開を迎えていた。フォレスターを停め、人だかりのする方を目指すと、一区画だけ真っ赤なチューリップが一斉に花を咲かせている。残雪の朝日岳・白馬岳、桜並木、チューリップの三層が競演し、誰もがうっとりと見入っていた。これに菜の花が加われば「あさひ舟川『春の四重奏』」と呼ばれるが、あいにく菜の花畑はやや離れたところに。でも奇跡の光景に出会えて、心を躍らせながらドライブを続けた。
水仙やストックに混じって赤いチューリップが開花し始めていた入善町の花畑。
舟川河川敷の桜並木は満開。チューリップ、残雪の朝日岳と相まって夢のような風景に。
チューリップ四季彩館〜氷見漁港 魚市場食堂〜ほたるいかミュージアム〜風力発電所
チューリップ四季彩館
富山県砺波市中村100-1
TEL. 0763-33-7716
OPEN 9:00〜18:00
不定休(施設HPにて要確認)
入場料:一般(高校生以上)310円、シニア(65歳以上)250円、小・中学生160円、幼児無料
https://www.tulipfair.or.jp
氷見 魚市場食堂
富山県氷見市比美町435 氷見漁港魚市場2階
TEL.0766-72-2018
OPEN 6:30〜15:00(土日は〜15:30)
1月1日〜3日休 ※臨時休業あり
https://www.instagram.com/himi_uoichiba
ほたるいかミュージアム
富山県滑川市中川原410
TEL.076-476-9300
OPEN 9:00〜17:00(最終入館16:30)
6月1日〜3月19日の火休(祝日の場合は翌休)、年末年始、1月最終月曜から3日間休
入場料:大人820円(6月1日〜翌年3月19日は620円)、小人410円(6月1日〜翌年3月19日は310円)
https://hotaruikamuseum.com
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
2024年02月号
ダイナミックな風景の中へ。九州冬の旅
2024年01月号
新潟文学紀行 〜川端康成『雪国』の面影を辿る〜
2023年12月号
水の織りなす美景をもとめて
2023年11月号
SUBARU BRZで訪ねる夢とロマンに触れる旅
2023年10月号
食と自然を愉しむ、秋の満腹ドライブ
2023年09月号
淡路島西海岸サンセットクルージング
2023年08月号
日本の原風景をたどり、盛夏の緑に包まれる
2023年07月号
人々が守り続けた文化と自然が生む絶景
2023年06月号
涼やかなグリーンを求めて
2023年05月号
春を告げる花と富山湾の恵みを探して
2023年04月号
自然とアートを巡るショートトリップ
2023年03月号
つむがれ、受け継がれていく歴史の道をなぞる
2023年02月号
暮らしが生み出す光の絶景
2023年01月号
古人の歩んだ道と、見上げた空と時代の面影を追いかけて
2022年12月号
旬のごちそうを求めて冬の安芸へ
2022年11月号
四国遍路~1200年以上続く、祈りの旅路を行く
2022年10月号
絶景&美食を堪能する三陸の秋
2022年09月号
東名・新東名SA&PA寄り道ツーリング
2022年08月号
夏をほおばる!
2022年07月号
Tribute to the original cartopia 50年目の“佳いところ”を訪ねて
2022年06月号
文豪も通った、情緒あふれる峠道をゆく
2022年04月号
空と陸の交通ミュージアムを巡る旅
2022年03月号
新しい季節を迎えに
2022年02月号
SUBAROAD体験ルポ『動き続ける伊豆半島〜2,000万年の歴史を走る』の旅へ
2022年01月号
SUBARUがお届けする、まったく新しいドライブ体験SUBAROAD始めました。
2021年12月号
ノスタルジーに浸る、埼玉レトロ旅
2021年10月号
カートピアスタッフおすすめ
グルメ&スイーツ特集
2021年09月号
“走り”を愉しむ旅
2021年08月号
海と山、自然の恵みを味わう
2021年07月号
あの日の夏景色
2021年06月号
煌めく新緑につつまれて
2021年05月号
下町と山の手を結ぶ坂の町をたずねて
2021年04月号
SUBARUで走りたい
絶景のツーリングスポットセレクション
2021年03月号
SONGS on the Road 〜あの時のBGM
2021年02月号
煌めくフルーツラインと彩甲斐街道冬の旅
2021年01月号
身も心もうるおう冬の温泉郷へ
2020年12月号
39年目の八溝山へ、再び
2020年11月号
深まる秋を探しに上州の絶景ラインを行く
2020年10月号
絶景&ご当地の逸品に心躍る!〜中央道SA・PA寄り道ツーリング
2020年09月号
埼玉にある異国を旅する
2020年08月号
夏を感じる。湘南〜西湘ビーチライン
2020年05月号
春と夏の合間で
2020年04月号
春薫る、国東半島から姫島へ
2020年03月号
命の故郷に身を浸して
2020年02月号
氷と雪の織りなす美景を訪ねて
2020年01月号
歴史と伝統が紡ぐ町へ「あいばせ!」
2019年12月号
京町家の宿に住まうように旅する
2019年11月号
この地に受け継がれる
ものづくりの明日を探して
2019年10月号
初秋の魚沼美景を覗く
2019年09月号
山岳絶景と走りを堪能し、古の宿場町へ
2019年08月号
神々が宿る島でパワーチャージ
2019年07月号
彩の国、色巡り
2019年06月号
カミツレの里で、暮らしを見直すビオツーリズム
2019年05月号
海の碧、空の青、川の蒼-土佐の水辺を旅する
2019年04月号
SUBARU BRZで走り抜ける、早春の伊豆半島
2019年03月号
今見たい夜景を巡る
北九州ナイトクルージング
2019年02月号
自然と文化が息づく島根
器めぐりの旅
2019年01月号
思い出とカタチに残る旅
福井ハンドメイド・ツーリング
2018年12月号
ラグーンブルー・パールに誘われて
2018年11月号
森林の宝庫・山梨でヒーリングドライブ
2018年10月号
読書の秋。旅を通じて本との出会いを愉しむ
2018年09月号
再び輝き始めた宮城・沿岸の町へ
2018年08月号
SUBARU XVでたっぷり走る夏の北海道
2018年07月号
茶摘み体験からはじまるお茶づくしドライブ
2018年06月号
フェリーがつなぐ、日本の中のアメリカ
2018年05月号
西海岸の美景ロードを走り異文化が交わる場所へ
2018年04月号
絶景と伝統文化にふれる春色ツーリング
2018年03月号
美しい稜線が連なる山里で春の気配と大地の記憶に出会う
2018年02月号
ふるくてあたらしい、蔵の街で春を待つ
2018年01月号
安全で愉しいドライブを祈る、新春ツーリング
2017年12月号
SUBARU XV 東京タワーめぐり
2017年11月号
WRX STI 秋色探しツーリング
2017年10月号
やわらかく五感をひらく、秋。富山アートめぐり
2017年9月号
高原の涼気と、樹の香にひたる
2017年8月号
2017 Summer HIGHLAND EXPRESS
2017年7月号
豊かな水の恵みが育んだ、ここだけの味を訪ねて
2017年6月号
雨空をたたえて、こけを愛でる
2017年5月号
花と香りをめぐる旅
2017年4月号
スバルのルーツを辿る旅
2017年3月号
暮らしに溶け込む器〜波佐見で春色さがし
2017年2月号
かやぶきの里のアクティブレスト
2017年1月号
首都圏夜景の名所ツーリング
2016年12月号
日本の国石 翡翠に誘われて
2016年11月号
天気と季節の境目にて
2016年10月号
水のある絶景を求めて