カートピア 広島県大竹市の下瀬美術館にある可動展示室。8つのカラフルなコンテナが水盤に浮かんでいる。 | SUBARU
カートピア 広島県大竹市の下瀬美術館にある可動展示室。8つのカラフルなコンテナが水盤に浮かんでいる。 | SUBARU

下瀬美術館「望洋テラス」からのパノラマ。8色の展示室の正面には瀬戸内海に浮かぶ宮島、右手に大竹コンビナートが広がる。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子

SUBARU on the Road

水の織りなす
美景をもとめて

広島県大竹市〜廿日市市〜呉市

下瀬美術館「望洋テラス」からのパノラマ。8色の展示室の正面には瀬戸内海に浮かぶ宮島、右手に大竹コンビナートが広がる。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子

今年3月、大竹市に世界的建築家・坂 茂氏が手がけた「下瀬美術館」がオープンした。水盤に並ぶ8つの可動展示室は世界でも類を見ないユニークな設計。「望洋テラス」からの眺めが殊更美しく、ため息がもれる。対岸の宮島には、大鳥居が昨年12月に改装を終えたばかりの世界文化遺産「嚴島神社」が鎮座。順次改装の進む社殿を参拝した後は、名物の焼がきを。広島湾沿いに呉へと進み、音戸大橋で繋がる倉橋島、そして県最南端の鹿島へ。瀬戸内海の多島美がシルエットに変わる夕景を目指し、クロストレック Limitedで走り続けた。

まるで水上のアート!8色の可動展示室


2023年3月の開館以来、いつか目にしてみたいと焦がれてきた水上の展示室。それは山口県との県境、広島県西部の大竹市に生まれた「下瀬美術館」にある。広島市西区に本社をもつ「丸井産業」の代表取締役・下瀬ゆみ子氏が先代の創業者である両親から受け継ぎ、半世紀以上かけて形成してきた日本と西洋の近代絵画や西洋工芸など約500点を収蔵。アンリ・マティス、エミール・ガレ、横山大観など、名だたる作家の名作はもちろんのこと、美術館の建物もアートと呼ぶに相応しく見応えがある。設計を手がけたのが世界的に活躍する建築家・坂 茂氏。エントランス棟、企画展示棟、管理棟と渡り廊下の全ての外壁がミラーガラス・スクリーンで結ばれることで、周囲の山や木々、瀬戸内海の島々が映り込み、建物が周囲の景観に溶け込むように配慮されている。

カートピア 建物の壁面が鏡になっており、周りの景色が反射して写っている下瀬美術館のエントランス | SUBARU

「下瀬美術館」のエントランスに到着した、オフショアブルー・メタリックのクロストレック Limited。

カートピア 下瀬美術館の敷地内にある並木道。 | SUBARU

通路の両脇の並木がミラーガラスに映り込み、まるで森の中にいるかのような心地に。

楕円型の広々としたエントランスホールで目を引くのは、2つの柱から放射状に伸びる檜の集成材の梁。まるで大樹が天空に向かって枝を広げるかのよう。全面ガラス越しに見えるカラフルなキューブが可動展示室。10×10mサイズが8棟並び、外壁が全て異なるカラーガラスで覆われ、テーマごとの展示が行われる。こちらは広島の造船技術を活用して台船の上に展示室を作り、水盤の水位が増すことで浮力が働き、配置を7パターンに動かせるというから驚く。企画展示棟の外にはエミール・ガレの作品のモチーフとなった植物が四季折々に咲く「エミール・ガレの庭」が広がる。なだらかな坂道を登り切った「望洋テラス」で、いよいよ私が焦がれていた風景とご対面。正面に宮島、阿多田島、江田島などの島々を望む真っ青な瀬戸内海に抱かれて、8色の可動展示室が水盤に並ぶ。瀬戸内海の多島美からインスパイアされた設計だそうで、屋外アートを鑑賞しているかのような心地に浸れた。「敷地の北と南側には計10棟のヴィラもあり、宿泊のお客様にはライトアップされる可動展示室と、大竹コンビナートの夜景のコラボもご覧いただけます」と広報の吉田帆香さん。いつかまた、きっと……。夢がひとつ増えた。

カートピア 一面ガラス張りで開放的なオープンカフェスペース。 | SUBARU

エントランス棟を抜けると、水盤に面したオープンカフェスペースもある。カラフルな可動展示室と宮島が迫る特等席。

カートピア カラフルなガーデニンググローブ | SUBARU

可動展示室のデザインをモチーフにしたガーデニンググローブはショップにて販売。

カートピア カラフルな花が咲き誇る庭 | SUBARU

エミール・ガレの作品に登場する植物のほか、約250種の草花が観賞できる「エミール・ガレの庭」。

水面に浮かぶ社殿で参拝
県最南端の島を目指して


広島岩国道路大竹IC〜大野ICを経て約20km、宮島口の駐車場にクロストレックを停め、桟橋からフェリーで約10分の水上の旅へ。古来「神の島」と呼ばれ、島自体が信仰の対象とされてきた宮島へと向かう。のんびりと揺られているうちに「嚴島神社」の大鳥居が近づいてきた。約3年半の修復期間を経て、昨年12月に竣工を迎えた大鳥居は平安時代から数えて9代目。高さ約16mの鮮やかな朱色の大鳥居が青空に映え、水面に映り込んで美しい。桟橋から表参道商店街へ入ると、店先で牡蠣を焼く香ばしい匂いに引き寄せられた。「焼がきのはやし」は75年前に当地で創業。昔から食されてきた酢牡蠣や土手鍋に代わり、初代が素材の美味しさを引き出す浜焼きを提案、焼がきという料理が生まれた。ここでは地物の良質な地御前かきの3年物を使用。粒が大きく牡蠣殻で蒸し焼きにするので身がふっくら。海水の塩味のみだが、旨みが凝縮された濃厚な味わい。店内では1年中生がきも提供。1年を通して水温が安定し、微生物の少ない水域で育つ牡蠣を使用するため安心だ。フレッシュで雑味が少なく、牡蠣初心者にも食べやすい。商店街を抜け、世界文化遺産「嚴島神社」の境内へと入っていく。創建は6世紀、仁安3(1168)年に平清盛が寝殿造を取り入れて造営した。雅な朱色の社殿は、潮が満ちると海に浮かんでいるかのように見える。回廊で繋がれた各社殿を参拝しながら先に進めば、その度ごとに五重塔や大鳥居、弥山や色づく木々が視界に入り、計算し尽くされた配置に感嘆の声が上がった。

カートピア 厳島神社の境内の様子 | SUBARU

嚴島神社の参拝入口に位置する摂社「客神社」と「五重塔」。※写真は満潮時

カートピア 厳島神社の境内にある狛犬 | SUBARU

本社祓殿と高舞台の間に置かれた狛犬。

カートピア 海上に建てられている厳島神社の大鳥居 | SUBARU

高さ約16m、主柱の根周り約10mと、木造の鳥居としては国内最大級の規模を誇る「大鳥居」。高舞台の先端、火焼前の延長線上、約200mの位置に立つ。※写真は満潮時

カートピア たくさんの生牡蠣を捌く店主の林大介さん | SUBARU

3代目店主の林大介さん。焼がきは3個1,400円。注文を受けてから焼き上げる。

カートピア 生牡蠣、カキフライ、牡蠣飯がセットになった定食 | SUBARU

生がき4個とカキフライ、かきめしがセットになった、いつくしま定食3,300円。

広島バイパス・広島南道路・広島呉道路を経て約55km、臨海工業都市・呉の第二音戸大橋を渡ると倉橋島に入る。音戸倉橋線の海辺を走るとそこ彼処に牡蠣筏が浮かび、養殖が盛んなことが分かる。彼方には大小無数の島々が。小さな漁港を横切り、集落を抜け、静かな入り江に出会う。特別なものは何もない。けれど不思議と心が鎮まる。やがて空は燃えるような茜色になり、島々はシルエットに。宮島口から2時間近い長距離ドライブになったが、クロストレックは安定感のある走りで島内のワインディングもスムーズ。鹿島大橋を渡れば県最南端の鹿島まで、もうまもなくだ。

カートピア 夕暮れ時の海沿いを走るクロストレック | SUBARU

夕暮れ時、倉橋島の海沿いロードを走るクロストレック。オレンジ色に染まる海上には、いくつもの島影が浮かび、幻想的な風景に。

今月のルート


下瀬美術館〜厳島神社〜焼がきのはやし
〜第二音戸大橋〜音戸倉橋線〜鹿島大橋

今月の紹介ポイント


下瀬美術館

TEL: 0827-94-4000
広島県大竹市晴海2-10-50
OPEN 9:30〜17:00
(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替え期間
入館料:一般1,800円/高大生900円/中学生以下無料
https://simose-museum.jp

嚴島神社

TEL: 0829-44-2020
広島県廿日市市宮島町1-1
OPEN 6:30〜17:00(時期により変動あり)
休館日:無休
昇殿料:大人300円/高校生200円/
小中学生100円
https://www.itsukushimajinja.jp

焼がきのはやし

TEL: 0829-44-0335
広島県廿日市市宮島町505-1
OPEN 10:30〜17:00(16:30LO)
※時期により変動あり
定休日:水曜日(祝日の場合は営業)、他不定休あり
https://www.yakigaki-no-hayashi.co.jp

※金額はすべて消費税込み。2023年11月現在のものです。

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