今月は、昨年ユネスコの世界ジオパークに認定されたダイナミックな自然景観を巡りながらスポーティな走りを愉しもうとSUBARU BRZ STI Sportを相棒に選んだ。
ボディカラーは鮮やかなWRブルー・パール。
潮風にわずかに春の暖かさを感じる沼津をスタートして伊豆半島を南下。
早咲きの桜で賑わう下田、南伊豆エリアを目指した。
爽快なワインディング路で、
MTを操る愉しさを堪能
伊豆半島の付け根にある沼津をスタートしてWRブルー・パールのSUBARU BRZ STI Sportで半島の南端を目指す。下田までの最短距離は下田街道(R414)を南下して天城峠を越えるルートだが、今回は修善寺から県道18号を西へ進み、半島の西岸を海沿いに走ってみた。このルート上には “伊豆半島ジオパーク(2018年世界ジオパークに認定)”に認定された景勝地がたくさんあるからだ。
ジオパークとはジオ(大地・地球)とパーク(公園)を組み合わせた言葉で、学術的に重要な地形や地質を備えた自然公園のこと。今から60万年前、太平洋にあった海底火山群が本州に衝突してできたという伊豆半島には、地殻変動や火山活動によって形成された変化に富む地形が随所にある。
海岸線に出る前に西伊豆スカイライン〜西天城高原道路(県道411号)を走ってみた。箱根から中伊豆に至るエリアにはスポーティな走りを愉しめるワインディング路がいくつかあるが、このルートはその中でも秀逸な道だ。尾根づたいに設けられた道は舗装状態がよく、眺望も抜群。適度な起伏のあるワインディング路はMT車でスポーティに走るにはうってつけだ。交通量もそれほど多くなく、無料で走ることができるのも嬉しい。ショートストロークで節度感のあるSUBARU BRZのシフトレバーは意図した通りに的確に操作でき、ストンと吸い込まれるようにシフトゲートに入っていく操作フィールが心地よい。
黄金崎。夕暮れには駿河湾に沈む夕陽に照らされて、岩石が黄金色に染め上げられる。
尾根道の爽快な走りを堪能した後、県道410号を西に下っていくと30分ほどで黄金崎に辿り着いた。駿河湾を隔てて遠景に富士山を望み、眼下には独特の黄土色の岩肌を持つ岩壁を眺める。夕陽の美しさでも知られるポピュラーな観光地だ。駐車場にあったジオパーク解説パネルによると、この独特の岩肌は海底火山の噴出物で、温泉水や地熱の作用によって岩が変質・変色したものだという。宇久須でガラス原料となる珪石が産出されたことや、土肥で金が採掘されたことも、同様の熱水変質の恵みだ。こうした来歴を踏まえ改めて荒々しさを秘めた黄色の断崖に目をやると、かつてはこの半島が激しい火山活動を続ける一つの巨大な島であったことが実感できた。
堂ヶ島の天窓洞は波によって地層の弱い部分が削られた洞窟。
堂ヶ島洞窟めぐり遊覧船で観に行くことができる。
石廊崎の突端。4月1日にオープンする『石廊崎オーシャンパーク』の駐車場から徒歩約8分。
石廊崎の西、奥石廊崎にある愛逢岬からの眺め。
この近くにも柱状節理を眺めるポイントがある。
ここからはR136を南下し観光客で賑わう堂ヶ島や、県道16号に入り伊豆半島の南端に位置する石廊崎にも立ち寄ってみる。どこへ行っても写真や図解入りの詳しい解説パネルがあって、目の前の風景がどのようにして形作られたのかを分かりやすく解説している。
自然が彫り刻んだ、
大地の造形美
しーもん 下田市観光交流課の世界一の海づくりプロジェクトの窓口として2014年に開設した下田のアウトドア・自然体験案内所。
下田にある90箇所の体験施設をネットワークしており、希望に応じたアクティビティを紹介してくれる。
案内人の土屋桂子さん(左)と田中秀夫さん。
下田の街に入り、最初に訪ねたのは『道の駅 開国下田みなと』2階にある“しーもん”。ここでは、アウトドアアクティビティや自然体験を中心に手作りクラフト体験やリラクゼーション、グルメ情報など、下田に関するあらゆる情報を提供し、紹介してくれる。
ジオガイドの鈴木美智子さんが“大地の魅力をお菓子を通じて発見してもらいたい”という思いを込めて作ったジオ菓子。
柱状節理のジオ菓子は下田産のひじきが入ったココア味のクッキー。
1個350円。「道の駅 開国下田みなと」で販売中。
爪木崎の俵磯にある柱状節理は、マグマや溶岩が冷え固まるときに体積が縮んでできたもの。
弓ヶ浜1200mの弧を描く白砂の海岸は、青野川に流されてきた砂粒が帯状にたまってできた「砂嘴(さし)」という地形。
ジオ菓子の「弓ヶ浜砂嘴クッキー」は南伊豆産のアロエや、熊笹、松葉を使いビーチの部分には白ごまを載せたクッキー。
「下田の一番の魅力は、引き出しが沢山あって、訪れる人それぞれの楽しみ方ができることです」と、案内人の土屋桂子さん。土屋さんは、一時期下田を離れていたそうだが、都会暮らしをする中で改めて自然に恵まれたこの土地の魅力に気付き、戻ってきたという。そんな土屋さんにお奨めのジオサイトを案内していただいた。予め予約をすればジオガイドと一緒に散策できるガイドツアーにも参加できる。今回はSUBARU BRZで気ままにポイントを巡りたかったので、下田エリアにあるジオサイトの中から、弓ヶ浜、龍宮窟、爪木崎、恵比須島を巡ってみた。マリンスポーツや金目鯛料理、温泉…とこれまでも下田には何度も足を運んだのだが、ジオサイト巡りは初めてだ。
龍宮窟は波が打ち付けてできた洞窟の天井の一部が崩れ、直径50mほどの天窓が開いたもの。
海底火山から噴出した黄褐色の岩壁と青い海水とのコントラストが美しい。
ジオサイト巡りの途中に立ち寄った洋菓子店「ケークス・カノン」。
父親が下田で和菓子店を営んでいるというオーナーシェフの加藤泰志さんは、洋菓子と和菓子作りの修業を経て2013年にケークス・カノンを開店。
名物の土鍋プリンの他にも、和と洋の要素を併せ持った“ケーキ大福”など、地元の食材を使ってここでしか味わえないユニークなお菓子作りをしている。
土鍋プリンはプリンの上にスポンジ、カスタードクリーム、生クリームを載せ、さらに6〜7種の旬のフルーツをトッピングしている。
写真はプリンアラモード4個分が入ったレギュラーサイズ(1800円・税込/確実に購入するには要予約)。
「実は観光ポイントとしてジオサイトに注目が集まりだしたのはこの数年のことで、地元で生まれ育った私も知らなかったポイントもあるんです」と土屋さん。その一つが、灯台や野水仙群生地として知られている爪木崎の俵磯にある“柱状節理”。地下から上昇してきたマグマが噴火を起こさず、地層の隙間に入り込んで冷えて固まったものだ。そのときの体積収縮によってできた六角形の割れ目が“柱状節理”で、俵磯では、遊歩道を下ってその岩のすぐそばまで近づくことができる。巨大な鉛筆を束ねたような幾何学的造形は神秘的で、近づいてみるとその大きさと存在感に圧倒される。
その後訪れた弓ヶ浜や龍宮窟、恵比須島もそれぞれ個性豊かな造形や景観を見せてくれた。伊豆半島は、訪れる度に新しい発見の扉を開けてくれる。地質学的に見ると本州で唯一フィリピン海プレート上にあるこの半島は、大地の足跡と南海の記憶を満載した、陸続きの宝島なのかもしれない。
今月のルート
沼津市〜修善寺〜西伊豆スカイライン〜
黄金崎公園〜堂ヶ島〜石廊崎〜
道の駅 開国下田みなと〜ケークス・カノン
2024年02月号
ダイナミックな風景の中へ。九州冬の旅
2024年01月号
新潟文学紀行 〜川端康成『雪国』の面影を辿る〜
2023年12月号
水の織りなす美景をもとめて
2023年11月号
SUBARU BRZで訪ねる夢とロマンに触れる旅
2023年10月号
食と自然を愉しむ、秋の満腹ドライブ
2023年09月号
淡路島西海岸サンセットクルージング
2023年08月号
日本の原風景をたどり、盛夏の緑に包まれる
2023年07月号
人々が守り続けた文化と自然が生む絶景
2023年06月号
涼やかなグリーンを求めて
2023年05月号
春を告げる花と富山湾の恵みを探して
2023年04月号
自然とアートを巡るショートトリップ
2023年03月号
つむがれ、受け継がれていく歴史の道をなぞる
2023年02月号
暮らしが生み出す光の絶景
2023年01月号
古人の歩んだ道と、見上げた空と時代の面影を追いかけて
2022年12月号
旬のごちそうを求めて冬の安芸へ
2022年11月号
四国遍路~1200年以上続く、祈りの旅路を行く
2022年10月号
絶景&美食を堪能する三陸の秋
2022年09月号
東名・新東名SA&PA寄り道ツーリング
2022年08月号
夏をほおばる!
2022年07月号
Tribute to the original cartopia 50年目の“佳いところ”を訪ねて
2022年06月号
文豪も通った、情緒あふれる峠道をゆく
2022年04月号
空と陸の交通ミュージアムを巡る旅
2022年03月号
新しい季節を迎えに
2022年02月号
SUBAROAD体験ルポ『動き続ける伊豆半島〜2,000万年の歴史を走る』の旅へ
2022年01月号
SUBARUがお届けする、まったく新しいドライブ体験SUBAROAD始めました。
2021年12月号
ノスタルジーに浸る、埼玉レトロ旅
2021年10月号
カートピアスタッフおすすめ
グルメ&スイーツ特集
2021年09月号
“走り”を愉しむ旅
2021年08月号
海と山、自然の恵みを味わう
2021年07月号
あの日の夏景色
2021年06月号
煌めく新緑につつまれて
2021年05月号
下町と山の手を結ぶ坂の町をたずねて
2021年04月号
SUBARUで走りたい
絶景のツーリングスポットセレクション
2021年03月号
SONGS on the Road 〜あの時のBGM
2021年02月号
煌めくフルーツラインと彩甲斐街道冬の旅
2021年01月号
身も心もうるおう冬の温泉郷へ
2020年12月号
39年目の八溝山へ、再び
2020年11月号
深まる秋を探しに上州の絶景ラインを行く
2020年10月号
絶景&ご当地の逸品に心躍る!〜中央道SA・PA寄り道ツーリング
2020年09月号
埼玉にある異国を旅する
2020年08月号
夏を感じる。湘南〜西湘ビーチライン
2020年05月号
春と夏の合間で
2020年04月号
春薫る、国東半島から姫島へ
2020年03月号
命の故郷に身を浸して
2020年02月号
氷と雪の織りなす美景を訪ねて
2020年01月号
歴史と伝統が紡ぐ町へ「あいばせ!」
2019年12月号
京町家の宿に住まうように旅する
2019年11月号
この地に受け継がれる
ものづくりの明日を探して
2019年10月号
初秋の魚沼美景を覗く
2019年09月号
山岳絶景と走りを堪能し、古の宿場町へ
2019年08月号
神々が宿る島でパワーチャージ
2019年07月号
彩の国、色巡り
2019年06月号
カミツレの里で、暮らしを見直すビオツーリズム
2019年05月号
海の碧、空の青、川の蒼-土佐の水辺を旅する
2019年04月号
SUBARU BRZで走り抜ける、早春の伊豆半島
2019年03月号
今見たい夜景を巡る
北九州ナイトクルージング
2019年02月号
自然と文化が息づく島根
器めぐりの旅
2019年01月号
思い出とカタチに残る旅
福井ハンドメイド・ツーリング
2018年12月号
ラグーンブルー・パールに誘われて
2018年11月号
森林の宝庫・山梨でヒーリングドライブ
2018年10月号
読書の秋。旅を通じて本との出会いを愉しむ
2018年09月号
再び輝き始めた宮城・沿岸の町へ
2018年08月号
SUBARU XVでたっぷり走る夏の北海道
2018年07月号
茶摘み体験からはじまるお茶づくしドライブ
2018年06月号
フェリーがつなぐ、日本の中のアメリカ
2018年05月号
西海岸の美景ロードを走り異文化が交わる場所へ
2018年04月号
絶景と伝統文化にふれる春色ツーリング
2018年03月号
美しい稜線が連なる山里で春の気配と大地の記憶に出会う
2018年02月号
ふるくてあたらしい、蔵の街で春を待つ
2018年01月号
安全で愉しいドライブを祈る、新春ツーリング
2017年12月号
SUBARU XV 東京タワーめぐり
2017年11月号
WRX STI 秋色探しツーリング
2017年10月号
やわらかく五感をひらく、秋。富山アートめぐり
2017年9月号
高原の涼気と、樹の香にひたる
2017年8月号
2017 Summer HIGHLAND EXPRESS
2017年7月号
豊かな水の恵みが育んだ、ここだけの味を訪ねて
2017年6月号
雨空をたたえて、こけを愛でる
2017年5月号
花と香りをめぐる旅
2017年4月号
スバルのルーツを辿る旅
2017年3月号
暮らしに溶け込む器〜波佐見で春色さがし
2017年2月号
かやぶきの里のアクティブレスト
2017年1月号
首都圏夜景の名所ツーリング
2016年12月号
日本の国石 翡翠に誘われて
2016年11月号
天気と季節の境目にて
2016年10月号
水のある絶景を求めて