ここがSUBARUです。Vol.44
見通しの悪い場所で前方の視界を補助する
フロントビューモニター
前方視界を補助するカメラ
フロントビューモニターは、見通しの悪い交差点などで前方視界を補助し、安全確認ができる装備です。また、壁など前方の障害物に向かって前向きに駐車するようなシーンで障害物との衝突を回避するために使うこともできます。
フロントグリルの六連星エンブレムの下に装備したカメラの映像をナビまたはマルチファンクションディスプレイの画面に表示します。ドライバーがクルマとの距離感覚をつかみやすくするため、ディスプレイには車両前端から約50cmの位置と、車両左右の両端から約30cmの位置にガイドラインが表示されます。
使いたいときはRレンジ以外でモニター表示スイッチを押します。最初はフロントビューモニターとサイドビューモニターの画像が1画面に表示され、スイッチを押すとフロントビューモニターの画像、さらにスイッチを押すとサイドビューモニターの画像に切り替えることができます。
SUBARU車以外にも同様のシステムを装備したクルマがありますが、SUBARUの場合は、カメラの取り付け位置をできるだけ高くしてドライバーの視界に近づけています。画面には左右180度の広範囲なエリアを表示します。しかし、ドライバーがカメラだけに頼って運転することを避けるため、画像表示中は常に「車両周辺を直接確認してください」という警告を表示します。また、リヤビューモニターやサイドビューモニターと間違えないように、画面に表示しているエリアがひと目で分かるアイコンをディスプレイに加えました。
針穴に糸を通すような開発
開発において最も苦労したのはSUBARU車の優れた走行性能、総合安全性能を実現するための機能を少しも損なうことなく、新しい装備を付加するということでした。当初はフロントグリルに小さなカメラを装着し、その画像データをキャビン内にあるディスプレイまで届ければよいのだからそれほど困難なことではないと思っていました。しかし実際に設計を始めると、SUBARU車のフロントまわりは、走破性と高い安全性能を実現するためのさまざまな装備・機能がびっしりと詰まっており、小さなカメラひとつすら入り込む余地が無かったのです。
まずフロントグリルには“外気を導入してエンジン房内を冷却する”という走行性能に関わる重要な機能があり、画像データを伝送するためのケーブルがグリルの隙間を遮るようなことがあってはいけません。さらにバンパー内部にはエアバッグ用のセンサーが内蔵されているため、そこに影響を及ぼすようなレイアウトもNGです。最もハードルが高かったのは、歩行者保護のための要件です。フロントフードを開けて、フロントグリルやバンパーの周辺を見ていただければ、そこに多くの隙間があることが分かります。この空間は、事故の際に歩行者への衝撃をやわらげる大切な空間なので、どんな装備もレイアウトできないエリアなのです。それらの厳しい条件をクリアできるカメラの最適な場所は六連星エンブレムの下でした。そこから運転席側へと直径約7mm、長さ80cmほどのケーブルを伸ばし、ヘッドランプ等から来ているハーネスの束と合流させるのですが、その間のレイアウトは文字通り僅かな針穴を見つけて糸を通すような困難な取り組みとなりました。
しかし、これら一つひとつの厳しい開発要件があるからこそ、優れた走行性能と世界トップレベルの総合安全性能を備えたSUBARU車が完成するのだということを実感しました。新開発の部品であっても一切妥協のないクルマづくり、それこそがSUBARUらしさだと思います。
フロントビューモニターがとらえた前方視界。左写真のような状況で、ナビ画面には右のような画像が表示されます。画面を確認したら、クルマを進め、目視で安全を確認します。
※フロントビューモニターはディーラー装着のDIATONEサウンド ビルトインナビを装着したときのみ作動します。
今月の語った人
村越 政之
株式会社SUBARU 第一技術本部 先進安全設計部 先進安全設計第一課
1985年秋田県生まれ。NHKで放送されている“全国高等専門学校ロボットコンテスト”に参加するため県内の高等専門学校に進学。在学中に本戦出場を果たすことはできなかったが、その頃からソフト開発に興味が湧き、大学は電気工学科へ進む。小学校1年生のときに始めたスケートは現在も楽しんでいる。アイスホッケー用のシューズでのスケーティングが好きで、一時はボランティアで子どもたちにスケートを教えながら指導員を目指したことも。新居を建ててからはDIYで日曜大工に取り組む。今夏はいままでで最大の作品であるウッドデッキを完成させた。
バックナンバー