ここがSUBARUです。Vol.48
DYNAMIC × SOLIDデザインを立体的に表現した
新型レガシィB4/OUTBACKのヘッドランプ
夜間の視界をさらに向上
ヘッドランプは夜間に前方をしっかり照らし出すという機能に加え、デザイン面でもクルマの印象を左右する重要なファクターとしての役割を持っています。私たち設計者には、ヘッドランプの機能を損なうことなく、デザイナーが描いたイメージをできる限り忠実に具現化することが求められます。
新型レガシィのヘッドランプは夜間の視界性能を高める2つの装備を新たに採用しました。ひとつはステアリング操作に連動してヘッドランプの光軸を動かし、カーブの先を照らし出すSRH(ステアリング連動ヘッドランプ)。そして、ハイビーム点灯時にアイサイトのステレオカメラで検知した前方車両の位置に合わせて、その部分だけを遮光し最適な視界を提供するADB(アダプティブドライビングビーム)です。
また、従来はハイビームにはバルブ(電球)を使っていましたが、今回はハイビームをプロジェクター内に組み込み、LED化して耐久性能を高めるとともに、ハイビーム点灯時の省電力化を図っています。
水平対向エンジンをイメージした
ヘッドランプデザイン
いま、SUBARUは「安心と愉しさ」を具現化する「DYNAMIC×SOLID」というデザインフィロソフィーに基づいてクルマをデザインしています。私が担当するヘッドランプで言えばランプの外枠を囲むようにレイアウトされたコの字型のポジションランプ(車幅灯)です。このカタチは、水平対向エンジンのピストンの動きを視覚化したもので、コの字形状のインナーレンズの中に導光棒というパーツを組み込み、そこに裏側の一部からLEDの光を入れて光らせています。そしてランプの中央よりに設けたターンランプの部分にインナーレンズを追加しました。これはヘキサゴン(六角形)グリルとのつながりを感じさせると同時に、あたかもピストンの動きを強調するコンロッド*のようなデザインイメージです。
*コネクティングロッドの略称。ピストンとクランクシャフトを結ぶパーツ。ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する重要な役割を担う。
新たな造形へのチャレンジ
今回、レガシィで初めてのチャレンジとなったのが、先にご紹介したコの字部分の造形をさらに強調するために、ヘッドランプのアウターレンズに凹凸を設けることでした(下のココスバコーナーの写真と解説参照)。
従来のヘッドランプは内側の形状にインナーレンズや導光棒を組み込んだ特徴のある形状ですが、外側のアウターレンズは凹凸のない形状でした。新型レガシィでは、コの字型の光に合わせてアウターレンズも凹凸形状を設けることでランプにダイナミックな表情を与え、コの字の先端がヘッドランプユニットからグリル側に食い込むような力強い印象を与えています。
とはいえ、アウターレンズの表面にこのような凹凸を設けるのは初めての取組みでしたから、さまざまな検証が必要でした。すぐに思いつくのが空力性能への影響です。枠内に空気の渦ができて冬季に内側に雪や氷が付着してしまうことはないのか? これを検証するため実際にクレイ(粘土)で造形したものをアウターレンズに貼り付け、零下15℃の試験棟であらゆる角度から雪を噴霧して、空気の流れを確認しながらクレイを少しずつ削って行きました。また、飛び石等でも壊れない強度を持たせながら、万が一歩行者と衝突した際には歩行者を傷付けることがないよう部分的に板厚を薄くして一定以上の荷重がかかった場合には壊れるように設計しています。さらに、生産面でも検証が必要です。ポリカーボネイト製のアウターレンズは、表面には紫外線による劣化を防ぐためのハードコートを、内側には曇りを防ぐ防曇剤を塗装します。これらの塗装がムラなく均一に行なえるような形状でなければ量産はできません。ただカッコいいだけでなく、長く、安心して使っていただける品質でなければ、SUBARUのパーツとしては許されないのです。それを実現するためには設計者だけでなく、実験スタッフ、デザイナー、生産現場も含めて皆が一丸となって取組まなければなりません。こうしてひとつの目標に向かって一致団結できるところがSUBARUらしいところだと思います。
ぜひお店で手を触れて、ヘッドランプのダイナミックかつ精緻な造形を確かめてください。
今月の語った人
福島 慎二
株式会社SUBARU 第一技術本部
外装設計部 外装設計第二課
1986年兵庫県神戸市生まれ。子どもの頃はあまり外で遊ばなかったが、2009年に就職して自然環境が豊かな群馬県で暮らし始めてから、登山やスノーボードなど、スポーツ全般を愉しむようになる。お気に入りの山は桐生にある鳴神山。フラットな山頂からは360°の雄大なパノラマを望むことができ、四季折々の花も愉しめてハイキングには最適だそう。一年ほど前からはジムで筋肉トレーニングを始め、今は毎週4〜5回は通うほど熱を入れている。「トレーニングの量に応じて自分の身体が変わっていくのが愉しい」という。ジャンルはボディビルディングではなく、身体をきれいに見せるフィジーク系とのこと。
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