ここがSUBARUですVoL.59
利便性を高めながら、安全性にもSUBARUらしい配慮を施した
レヴォーグの4:2:4分割可倒式リヤシート
レヴォーグでの新たな挑戦
私たちがシートを設計する際は、第一に安全性を考慮し、事故による衝撃を受けた際に乗員を守るための強度・構造を確保した上で、長時間座っていても疲れない形状を考えていきます。さらに、燃費性能や運動性能を良くするために可能な限り軽量化し、車両価格が跳ね上がることのないようコストを抑える努力も重要です。これら基礎的な要件を満たしながら、クルマのキャラクターに合わせて快適性、利便性を高めていきます。利便性を向上するため、リヤシートには背もたれを倒して荷室を拡大できる分割可倒式シートを採用しています。従来SUBARUでは、背もたれを6:4の割合で2分割できる6:4分割可倒式シートを採用してきました。今回、レヴォーグでは、4:2:4分割可倒式リヤシートを新たに開発しました。
乗員4人とスキー等の長尺ものを搭載するような場面で、4:2:4分割可倒式なら中央部分の背もたれを倒してそこに荷物を積み、後席の乗員は右側席、左側席にゆったりとお座りいただくことができます。従来と比較して更に荷室のバリエーションが増え、使い勝手を向上することができました。一方で、安全面においては新たな取組みが必要となりました。
速度差に秘められたSUBARUらしさ
クルマのシートは前席と後席で構造が異なります。前席は背もたれと座面が一体構造となっており、頑丈なフロアに4点の支持ポイントでしっかりと固定されています。これに対して後席は背もたれと座面が独立した構造となっています。背もたれには、急ブレーキをかけた時など、荷室に積んだ荷物が、キャビンに侵入するのを防ぐ強度が必要です。
後席を3分割に変更したレヴォーグは、従来の固定方法に加え中央席と右側席の背もたれの結合方法を工夫し、強度を確保しています。その結合部に採用したのが、クルマのドアに使われているものと同じ発想のロック機構です。右側席背もたれには中央席背もたれと接している部分にクギのような形状をした金属製のピンを取りつけています。それに対し中央席側の背もたれにはこのピンを受け止めるコの字型のくぼみがあり、右側席背もたれのピンが入った時には自動的にロックがかかって固定される仕組みです(○印で示した部分)。
この機構は固定時には外れる恐れがなく、外したい時にのみロックを解除して外すことができるシンプルかつ信頼性の高い構造です。また中央席の背もたれは、サイズが小さいので、その分内部の骨組や鉄板を厚くすることで、左右席と同レベルの強度を持たせています。
頑丈で、ある程度の重さのある背もたれですが、倒す操作はとても簡単です。背もたれの付け根にバネが内蔵されているので、各座席の上部にある解除ノブを引くだけで倒すことができます。
さらにワゴン車では荷室の左右にリヤシートフォールディングスイッチがあるので、荷室側からでもシンプルな操作で背もたれを倒していただけます。
また、中央席が倒された状態で、右側を倒す際、固定する装置に指が挟み込まれないよう、中央席の背もたれ下部にあるバネには、倒れる速度を抑えるためのダンパーを装着しました。
安全のために徹底した配慮をするところがSUBARUらしいモノづくりだと感じています。
背もたれが倒れる時の速度の違いは、右側席全てを倒す場合と、中央席を倒した状態で右側席のみを倒す場合で比較することができます。是非SUBARUのお店でその速度の違いを確認してみてください。
今月の語った人
田上 大郎
株式会社SUBARU 第一技術本部
内装設計部 シート設計課
1982年熊本県生まれ。一年に一回、自らの運転で熊本市内の実家を訪ねるロングツーリングを行なっている。気分にまかせてふらりと旅に出るのも好きで、全国各地にいる学生時代の友人を訪ね、北海道から鹿児島まで出かけていく。10年ほど前から写真撮影を始め、旅先で気の向くままに撮影している。現在愛用のカメラはSONYのデジタル一眼カメラα65。レンズやアクセサリーを少しずつ増やしており、最近はカールツァイスの広角単焦点レンズや三脚を購入した。被写体は自然景観から建造物と幅広い。
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