ここがSUBARUですVoL.85
フォレスターX-BREAK、SUBARU XV・インプレッサ
e-BOXER搭載車に装備された
e-アクティブシフト
コントロール
e-BOXERとリニアトロニックの特長を活かした、
新感覚のスポーツ制御
マニュアルトランスミッションのクルマをスポーティに走らせる場合、コーナー手前でブレーキングしている時にシフトダウンしてエンジン回転数を上げ、コーナーを抜けてからの加速に備えます。e-アクティブシフトコントロールは、それと同じことを自動で行なう機能です。ステアリングにあるSI-DRIVEのスイッチを押してSモードで走行中、アクセル開度、ブレーキストローク、車両の前後左右にかかるGを各センサーが読み取り、ドライバーがスポーティな走行をしているとECUが判断した場合に作動します。連続するコーナーを走っている時など、スポーティな走行状態が続く間は継続して作動し、通常の走行になればSモードに戻ります。
e-アクティブシフトコントロールのコーナリングをひとことで表現すると、“トランスミッションの操作に長けたドライバーがスポーティに走る時の感覚”です。ブレーキングの強度や制動時間の長さからドライバーの気持ちを読み取り、一気に2~3段分シフトダウンするのか、二回に分けた方が気持ちいいのか、など感覚的な部分にまで気を遣ってエンジン回転の上昇のさせ方を制御しています。チェーン式のリニアトロニックの特性を活かし、実際の固定ギヤよりも緻密に有段感覚のシフトダウンを行ない、ギヤが直結したようなメリハリの効いたフィーリングを演出しました。さらにコーナーの出口でアクセルペダルを踏むとトルクが瞬時に立ち上がる電気モーターの特性を活かし、応答性がよくキビキビとした走りをお愉しみいただけます。
キッカケはスイスのフルカ峠
この制御を造るキッカケとなったのが、スイスの高原にあるフルカ峠でe-BOXER車の走りを評価していた時のことでした。アルプスを駆け上るこの道は、比較的高い速度で走ることができる直線路とタイトなヘアピンコーナーとが連続する爽快な山岳路です。リニアトロニックはアクセルを踏んでいない時はエンジン回転数を下げて燃費を向上させるように設定されているため、コーナーの手前で減速するとエンジン回転数も落ちてしまいます。ゆっくり走っている時には不足はないのですが、ある程度の速度をキープしながら、スポーティに走ろうとするとエンジンの回転数が下がり過ぎてしまい、コーナーの立ち上がりではアクセルをほぼ全開にしてフル加速しなければなりません。そこで目を付けたのがSI-DRIVEでした。SI-DRIVEは、エンジンをかけたり止めたりして燃費良くスムーズに走る「インテリジェントモード」と、エンジンは止めずに回転数を高めに維持して力強く走る「スポーツモード」の2つの走りのキャラクターを用意して、スイッチひとつでお好みのモードをお選びいただける機能です。フルカ峠のような道では、「スポーツモード」の走りのキャラクターをより強調し、コーナリング時のエンジン回転数の不足を補ってスポーティな走りを愉しめるようにしたら?という話になり、商品開発プロジェクトチームに提案したのです。
e-アクティブシフトコントロールの制御を造る際に最も大切にしたのが、“スポーティな走行”や、“シフトダウン時の気持ちいい回転数の上げ方”など、ヒトそれぞれで異なる感覚的な部分を丁寧に評価することでした。運転経験が浅いドライバーが乗ってもスポーツ走行の玄人が乗っても、それぞれの運転技量に合わせて違和感なく気持ちよく走ることができる制御を行なうためには、実際に様々な運転技量の人がいろいろな道を走って、データを積み重ねていくしかありません。今回、走りの評価に要した期間は20ヶ月以上。テストコースはもちろん、サーキットや全国各地のワインディング路をはじめ、世界の本格的な峠道を徹底的に走り込みました。ヒトの感覚を中心に据え、実路でクルマを走らせて評価するのは、今も昔も変わらないSUBARUらしい地道な開発手法です。
今月の語った人
井上 航[いのうえ わたる]
第二技術本部 パワートレインシステム性能開発部
パワートレイン走行性能開発第四課
群馬県太田市の病院で生まれ、スキー場やりんご、ぶどうなどの果物の生産地として知られる沼田市で育つ。小さい頃から父親の運転ででかけるドライブが好きで、免許取得後は自身で運転することが好きになる。2014年SUBARU入社後は関東近郊のサーキットでスポーツ走行を愉しんでいる。高速道路を気ままに走り、名古屋や金沢にロングドライブするのも好き。そんな時はお気に入りのアイドルの楽曲を愉しむそう。最近のお気に入りは小室哲哉作曲のRoute246(乃木坂46)。
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