ここがSUBARUですVoL.73
万が一の側面衝突の際に
力を発揮する
SUBARUのリヤドア
キャッチャー構造
緻密な制御で
優しく衝撃を吸収
前面衝突、後面衝突と比較して、側面衝突は衝突エネルギーを吸収・分散するためのスペースが狭いことが課題です。限られたスペースの中で乗員の安全を守るためにSUBARUでは、①車体とドアの骨格構造、②ドアトリム(内装)、③乗員の胸部・腰部を守るSRSサイドエアバッグ、④乗員の頭部を守るSRSカーテンエアバッグ、の4つを組み合わせて使うことで効率的に衝突エネルギーを吸収・分散しています。衝突エネルギーを吸収・分散させる際に、私たちが重要視しているひとつが、エアバッグの着火タイミングです。衝突現象は1秒あるかないかという僅かな時間で終了しますが、大きなエネルギーを、短時間で一気に吸収しようとすると乗員へのダメージが大きくなってしまいます。そのためSUBARUではまず、狭いスペースにエアバッグを衝突初期から展開させることで、衝突エネルギーを優しく吸収しています。センサーの情報から瞬時に衝突形態を判断し、その衝突形態に合わせてエアバックの着火タイミングを緻密に制御しています。
クルマの大黒柱
側面衝突時に衝突エネルギーを吸収・分散するために大きな役割を果たしているのが車体とドアの骨格構造です。中でも前から2番目の柱「Bピラー」は、家に例えるなら大黒柱ともいえる重要な役割を果たします。大黒柱ですから当然壊れないように頑丈であることが大切ですが、クルマの場合はさらに衝突エネルギーを吸収するという役割も担っています。側面衝突の際、乗員への影響が少ないBピラーの下部は変形してエネルギーを吸収します。これに対して中央から上部は変形せずにしっかりと乗員を守ります。この機能を持たせるため、Bピラーは強度の異なる2種の鋼板を組み合わせて作られています。
リヤドアの下の
小さなキノコ
ドアの内側には前後方向をつなぐ棒「サイドインパクトビーム」が2本配置されており、これは家の梁に相当する役割を果たしています。ドアにかかった衝突エネルギーは2本のサイドインパクトビームを介して、前後のピラーに伝えられるため、ドアだけでなくボディの骨格全体で受け止めることができます。ドアのエネルギーをボディに伝える際に重要になるのが、サイドインパクトビームの付け根、ボディとドアがオーバーラップしている部分です。サイドインパクトビームと接触するポイントには、ボディ側へ荷重をしっかりと受け止める構造を取っています。
また、ボディとサイドインパクトビームがオーバーラップしている部分の面積も重要です。ここが狭いと、衝突の際にドアがボディの枠を乗り越えてキャビンの中に侵入してしまう恐れがあるからです。リヤドア下部、リヤタイヤアーチと接している部分は、最もオーバーラップ面積が小さくなりがちなエリアです。そこで、SUBARUでは、この部分に大きな衝突エネルギーがかかった場合でもドアがボディ骨格を乗り越えてしまわないよう、ドアキャッチャー構造を採用しています。上の写真でポインターで示している部分がそれで、ドア側にはサイドインパクトビームの付け根に当たる部分に金属製のキノコのような形状の突起があります。ボディ側にはそれと組み合うような黒い樹脂カバーを施したくぼみがありますが、この奥にはドア側の突起と組み合う形状の鋼材があります。何だろうな?と思われていたお客様もいらっしゃるかもしれませんが、SUBARUでは2代目レガシィの頃から採用している構造です。万が一の側面衝突の際にはキノコの頭の部分がボディ側の穴に引っかかり、ドアがボディを乗り越えてキャビンに侵入することを防ぎます。
ドアキャッチャー構造はSRSエアバッグ同様に事故に遭わなければ機能を発揮することのないものですが、常に最大の安全性能を追求するSUBARUらしい装備のひとつです。
今月の語った人
猪爪 伸明
第一技術本部 車両研究実験第二部
車両研究実験第四課
東京都墨田区生まれ。大学院を卒業してSUBARUに入社するまで、24年間両国国技館にほど近い実家で暮らした。体が大きかったので相撲に誘われたこともあるが小・中学時代は柔道部に所属。高校、大学時代はスキー部に所属。大学時代、雪道で走れなくなったクルマを先輩が乗っていたレガシィに牽引してもらったことでSUBARU車の走破性能を知った。おすすめのゲレンデは標高が高く、雪質がとても良い東部湯の丸。群馬県太田市は星空の美しさや田んぼのある風景があって暮らしやすいそう。お気に入りは清水屋のもちもちした焼きそば。
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