COCOSUBA

ここがSUBARUですVoL.92

COCOSUBA

操縦安定性を高める
新型SUBARU BRZの

フロントエアアウトレット


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操縦安定性を高めるフロントエアアウトレット。穴を塞いで走らせた比較試験では、運転経験の浅いドライバーでも明らかな挙動の違いを感じることができたそうです。 操縦安定性を高めるフロントエアアウトレット。穴を塞いで走らせた比較試験では、運転経験の浅いドライバーでも明らかな挙動の違いを感じることができたそうです。

Photographs● 田丸瑞穂

空力操安性能

野嵜:クルマの空力性能といえば、従来は燃費向上のために空気抵抗を低減することが目的でしたが、SUBARUでは操縦安定性や乗り心地を向上するために空気の流れをコントロールする“空力操安性能開発”を進めてきました。その成果のひとつが新型SUBARU BRZに採用したフロントエアアウトレットです。

走行時にフロントバンパー下に流れ込んだ空気はタイヤハウス内に溜まり、ホイールハウス内の圧力を上げてしまいます。高圧の乱れた空気はホイールアーチから不規則に流れ出して車両側面に圧力変動を起こし、振動や揺れの原因となります。フロントエアアウトレットはホイールハウス内の高圧の空気を整流して排出することで車両側面の乱流を低減し車両を安定させます。その効果は高速走行時だけでなく時速20km程度の走り出しから感じることができます。ハンドルを切るほどに舵力が増していくフィーリングで、ドライバーがイメージしたラインぴったりにクルマを操れる運転の愉しさを味わうことができます。

綿貫:私の仕事は空力操安性能を開発することですが、今回BRZではハンドリング性能と美しいデザインを両立する、フロントエアアウトレットを検討しました。

先行開発はすでに進めていましたが、SUBARUとしての量産採用は初のアイテムで、意匠面に関わる部品のため、性能開発部署だけではまとめあげられず開発は難航しました。性能を任されている研究実験部隊としては、原理原則に基づいてあるべき空気の流れを考えて設計要件を決める必要がありました。ホイールハウス内の圧力現象を明確にするために流体解析による検討を行ない、時には空気がどのように流れているか実験で検証しながら設計要件を決めていきました。その結果、エアアウトレットで整流された空気が乱れた側面流と合流することで車両側面の圧力変動が低下し、車両が安定して走行することがわかりました。

次にやることは具体的な形状に落とすことです。開発時間を短縮するため、開発初期はハンドワークで試作していました。試作品を組み付けた試験車を走らせてみると、狙い通りに応答性や接地感が良くなると同時に、開口位置や大きさで効果が異なることが新たに分かりました。そこで開口位置や大きさを修正しながら、もっとも効果の高い形状を見極めました。それらを基に、生産性や意匠性を考慮した設計を野嵜さんが進めてくれたのです。完成した試作品を手に取った時は、やっと形になった達成感を感じました。その後ミリ単位で微調整を繰り返し、最終的な量産構造にまとめあげることができました。

野嵜[のざき] 隆司 技術本部 内外装設計部 外装設計第1課

技術本部 内外装設計部 
外装設計第1課 野嵜(のざき) 隆司

設計者の夢を実現した
機能部品

野嵜:モータースポーツではフェンダーにダクトを設けたクルマは一般的です。父親の影響で小さいころからWRカーやレーシングカーに憧れてきた私にとってはクルマのカッコ良さを象徴するパーツでした。ただ走る環境が異なる量産車には採用例がなかったのです。SUBARUでもダクトを想起させるデザインはありましたが実際に穴は空いていませんでした。機能部品としてのフェンダーダクトはクルマの設計者としての夢でもあったのです。量産車に採用するにあたって特にケアしなければならないのは穴に雪や泥がつまってしまうことです。北海道美深町にある試験場での冬季試験を繰り返し、凍結しても破損することなく、詰まった時には速やかに除去できるような穴の形状を造り込みました。

綿貫:過酷な冬季試験と同様に雪道で徹底して走り込んでクルマを仕上げているのはSUBARUらしいところです。FRスポーツカーだからドライ路面でベストパフォーマンスを出せばいいということではなく、どんな状況でも安全にお客様を目的地までお届けするという気持ちはAWDもFRも変わりありません。圧雪路、融雪路からブラックアイスバーンまで冬季のあらゆる路面を走り込んで造っていますから、雪国の方にも自信を持っておすすめできるクルマです。

綿貫 賢二 技術本部 車両運動開発部

技術本部 車両運動開発部 綿貫 賢二

今月の語った人


野嵜[のざき] 隆司(写真左) 綿貫 賢二(写真右)

野嵜[のざき] 隆司(写真左)

技術本部 内外装設計部 外装設計第1課

東京都青梅市生まれ。父親がクルマ好きで、92年の初代ランサーエボリューションから歴代のランサーを乗り継いできた。その車両に付いていたウイングの形状や機能に興味を持ったことがキッカケでクルマの空力パーツマニアとなる。学生時代は手づくりのクルマで競い合う学生フォーミュラに参加し全国大会で7位入賞。新型SUBARU BRZではエクステリアの樹脂パーツ全般の設計に携わり、当時の仲間達に特に見てもらいたいという。

綿貫 賢二(写真右)

技術本部 車両運動開発部

栃木県益子町生まれ。幼少のころからの物作り好きが高じて高専に進学。その時の担任がラリー経験者でクルマが曲がる原理を教えてもらったことをきっかけに操縦安定性に興味を持つ。卒業後はSUBARU航空宇宙事業部に入社。同時にラリーに参戦しながら、操縦安定性を追求してボディを補強したりダンパーブッシュの改良をしたりする。その後現在の職場に転籍。最近はMTBダウンヒルとトライアルバイクなど二輪車を楽しんでいる。

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