ここがSUBARUですVoL.76
運転視界を確保しながら
室内の快適性を高める
SUBARU車の湿度センサー
「車両湿度センサー」の役割
「車両湿度センサー」は車両室内の湿度を把握することで、空調装置をより緻密に制御し、エネルギーの無駄な消費を抑えながら、運転視界と乗員の快適性を高めるための装置です。SUBARUでは、2015年に発売したインプレッサスポーツハイブリッドに初めて採用し、現行のフォレスターでは全グレードに設定しています。
センサーは3cm×4cmほどの小さなもので、室内の温度と湿度を計測する素子と電子回路が組み込まれています。装備されているのはドライバーの左膝のあたり、小さなスリットがある部分です。エアコンの風や太陽光が直接当たらず、正確に車内の温度、湿度を計測できる場所として、この場所を選んでいます。
「車両湿度センサー」の機能が最も発揮されるのは、寒い日にできるだけ早く車内を温めようとする時です。ヒーターは空気を温めて温風を作るため、内気循環モードにして冷えた外の空気を遮断し車内の空気を循環した方が早く温めることができます。ただし内気循環モードでは、乗員の汗や呼気などにより、室内の湿度が室外よりも高くなるために結露してガラスが曇ってしまいます。曇りを除去するためには外気を導入する必要があります。「車両湿度センサー」があれば、車室内湿度の情報を元にエアコンを制御するコンピューターが必要な量だけ外気を取り込み、内気とミックスして温風を作ることができます。エンジンが作り出した熱を無駄なく使って、ガラスの曇りも抑えながら速やかに室内を温めることができるのです。
推奨設定温度は「25℃」
SUBARU車はエアコンを適切に制御するための情報として、室内の温度と湿度の他にも、外気温、日射量をモニターしています。これに乗員が設定したエアコンの温度設定値や、ステアリングヒーター、シートヒーターなど暖房装置からの情報を加えて、乗員の要望に合わせて空調を最適に制御します。とはいえ、外気温や湿度などの気象条件は国によって違い、寒さや暑さの感覚や好みも人それぞれです。そこで、開発時にはSUBARU車が販売されている地域に試験車を持ち込んでチューニングを行ない、エリアごとにお客様のご要望をリサーチして、北米、欧州、日本で異なった空調制御を行なっています。
日本仕様では、直接風が当たって肌が乾燥することのないよう、風量を抑えめにしながら吹出し温度の高低で制御するようにしています。
私たちが推奨する使い方は、まずAUTOモードのスイッチを押して温度を25℃に設定することです。ここが快適性と省エネルギーのバランスが最も良い設定です。次に、そこを基準にお好みに合わせて設定温度を小刻みに上げ下げしていただければ最適な空調環境が得られます。
空調が最優先するのは
「視界確保」
クルマの空調装置は、メーカーの思想によって制御の仕方が変わってきます。SUBARUが空調装置を作る際に最も重視しているのは、「視界確保」です。ガラスが曇って運転視界を妨げないよう、ヒーター稼働中は常に微量ながらデフロスターが働くように制御しています。デフロスターの作動中は、乗員の顔付近の温度が高くなりがちですので、そうならないようにデフロスター吹き出し口の形状や風の流れを考慮してデザインしています。また、エアコンのデフロスタースイッチはエマージェンシースイッチと同様の考え方で、どのスイッチに対しても優先しており、押せばどんな状況でも即座に外気を導入し、湿度の低い風を出すように設定してあります。
乗員の快適性を向上する空調装置ですが、そのようなパーツでも安全性を最重視したものづくりをしているところがSUBARUらしいところです。
今月の語った人
齋藤 顕一郎
第一技術本部 車両研究実験第三部
車両研究実験第四課
青森県八戸市生まれ。家の裏は鹿など野生動物の姿も見かける森で、幼少時は野山を駆け回って過ごした。小学3年のときに野球を始め、高校3年までピッチャーとして活躍。甲子園出場こそ叶わなかったが、同世代の田村龍弘選手(千葉ロッテマリーンズ)や北條史也選手(阪神タイガース)とは公式戦での対戦経験もある。SUBARUに就職した後も職場の草野球チーム「ENDURO」に所属し、週一回のペースで練習・試合を楽しんでいる。
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