ここがSUBARUですVoL.91
新型SUBARU BRZ 6速AT車の
「スポーツモード」
アダプティブ制御
ドライバーの“本気度”に感応する
「スポーツモード」
新型SUBARU BRZでは、排気量をアップした新開発FA24エンジンの採用にともない、オートマチックトランスミッションを一新しました。ハードウェアではエンジントルクアップに対応するため、各部の信頼性を強化しています。さらに“高回転まで一気に吹け上がる新エンジンの特性を存分に味わっていただきたい”という思いで、制御系を大幅に改良しました。
BRZの6速ATは、変速制御をクルマに任せる通常走行モードと、ギヤ段を固定しドライバーが変速段を選択するマニュアルモードがあります。さらに走行シーンに合わせて「ノーマルモード」「スノーモード」「スポーツモード」3タイプのドライブモードを選ぶことができます。「ノーマルモード」は燃費性能、静粛性、運動性能のバランスが良い制御で、上り坂では勾配に合わせて低速ギヤを保持、下り坂では坂の勾配に合わせて低いギヤを選択しエンジンブレーキを効かせるといった制御を行ないます。「スノーモード」は滑りやすい路面での発進・走行に、「スポーツモード」はワインディング路などでスポーティな走行をする際にお使いいただけるように設定しました。いずれのモードも、アクセル開度、車体速度、トランスミッション内部の回転速度、Gセンサーの情報を元に車両の走行状態を検知し、自動的に最適なシフトを選択するアダプティブ制御を行なっています。
このうち今回は「スポーツモード」のアダプティブ制御を大きく進化させました。初代BRZのお客様に車両についてのご意見を伺ったところ、“スポーティな走りをしている時にATが選択するギヤ段が意図に合わないことがある”という声があったからです。具体的にはコーナリング時にコーナー手前でのシフトダウン、コーナー脱出時の加速でのシフトアップ時のギヤ段、タイミングです。スポーティな走りでは、コーナーに入る手前でしっかりと速度を落とし、コーナーを抜ける時には直線に向けて一気に加速します。その際、トランスミッションは素早いシフトダウンでエンジンブレーキを効かせるとともに立ち上がり時はエンジン回転のアップに合わせてシフトアップします。実は初代モデルでもこのような制御を用意していたのですが、過度に制御が介入することがドライバーの違和感につながるため、ドライバーが本気でスポーティ走行をしている時にのみ上記のような制御が介入する設定にしていたのです。新型BRZでは考え方を変え、「スポーツモード」のスイッチを押した時点で、ドライバーはスポーティ走行を愉しもうとしていると判断し介入領域を広げました。その際、“違和感”を与えないためには、ドライバーの意図に合った制御を行なわなければなりません。そのために従来の前後方向のGに加えて新型では横方向のGもプラスして車両の動きを緻密にセンシングし、コーナーに入る直前の速度や操作状況も踏まえて、ドライバーがどれだけスポーティな走行をしようとしているのかその“本気度”を算出し、それに合わせて制御の仕方を可変できるようにしました。「スポーツモード」をお使いいただいている時は、そこそこのペースで走行している時もしっかりと制御が介入するようにしています。
今回の開発において印象に残っているのは、「スポーツモード」の走行試験を雪道でもしっかりと行なっていることです。今回、「スポーツモード」で目指しているのは“ワインディング路での愉しい走り”ですが、雪道でこのモードで走るケースも無いとは言えません。どんな路面でもドライバーが意図した通りにコントロールできること、というSUBARUの思いはFRのスポーツカーであるBRZの「スポーツモード」でも変わりありません。新型BRZでは、AT車にアイサイトが標準装備されました。スポーツカーであるBRZでも安全、安心に対しては妥協することなく取り組むという姿勢がSUBARUらしいところだと思います。
今月の語った人
川上 晃弘
技術本部 車両環境開発部 環境性能開発第一課
千葉県千葉市で育つ。小さい頃から走るのが大好きで、小学生時代は運動会の花形リレーの選手として活躍。50m走では無敗を誇ったが中学生時代に人生で初めてサッカー部員に敗れる。高専に進学後は100m、200mの短距離走で高専全国大会3位、関東インカレ男子2部まで進むが高専最後の大会直前に右足ハムストリング断裂により現役引退。憧れの選手は、フォームが美しく、迫力のある走りが魅力のウサイン・ボルト選手。
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