ここがSUBARUですVoL.62
ストレスなく、安心して運転できる
SUBARU車の
コクピットレイアウト
安全に運転できる
環境を整える
SUBARU車の特長の一つは、ドライバーがとても自然な姿勢で運転席に座って運転操作ができるところではないかと思います。それを実現するためSUBARUには、人間工学的な見地から車両を実験評価するチームがあります。私はその中でも、主にドライバーの操作のしやすさ、視界などの検証を担当しています。一般的に、人間工学とは、人ができるだけ自然な状態や動きで使えるように機械や道具を設計・デザインするための学問であり、また、人が効率的にミスなく動けるように周囲の環境を整え、事故・ミスを可能な限り少なくしようとするものです。こうした視点から、クルマという限られた空間の中に快適な状態で人を乗せ、またドライバーが操作しやすい運転空間を作るために実験・検証するのが、私たちの役割です。
クルマの開発初期には、「運転が愉しいスポーツカー」「ラフロードも走れる本格的なSUV」など商品ごとのコンセプトがあり、それに適したドライバーの姿勢や操作性が求められます。運転席という限られた空間にドライバーにどのような姿勢で乗っていただくか、これを検討することから、私たちの役割は始まります。
しかし、車種にかかわらず私たちが大前提として大切にしているのは、ドライバーが違和感なく、自然にリラックスした状態で運転できるような環境を整えることです。日常的に使う道具を想像していただくとわかりやすいかと思いますが、無意識にであっても、使う時に姿勢が不自然になるものや、無駄な力が入るものは疲れやすかったり、ミスが起きやすかったりするのではないでしょうか。クルマとしての走行性能や衝突安全性能を高めるのはもちろん、まずミスが起き難い運転環境を作ること、それが私たちSUBARUの考える安全なクルマへの第一歩「0次安全」です。
いかに自然に
違和感なく操作できるか
運転をする時に頻繁に操作するのが、アクセル/ブレーキペダルとステアリングです。SUBARU車の場合は、アクセル/ブレーキペダルは、運転席に座った時に自然に足を前に出した位置に配置しているので、進行方向に正対したまっすぐな姿勢で運転できます。他社ではオルガンのペダルのような形式のペダルを採用しているクルマもありますが、SUBARUは吊り下げ式を採用しています。吊り下げ式はかかとを置く場所の自由度が高く、幅広いドライビングポジションで踏みやすさを提供できるという利点があるからです。
ステアリングにおいては、上下・前後に動かせるように調整幅を大きく設定しました。シート位置と合わせて調整することで、小柄な方から大柄な方まで快適にステアリング操作していただけます。ステアリングの形状は、まっすぐ走っている時に保持しやすいよう9時15分から10時10分の位置にかけては少し太めで平たい形状に、他の部分は、駐車時などに大きくステアリングを切る際には持ち替えやすいよう、均一な断面にして操作性をあげています。
また、運転中に瞬時に情報を確認しなくてはいけない表示系は、できるだけ視線を動かさずに確認できるように上部にまとめ、その下に、エアコンやナビ・オーディオの操作パネル類をレイアウトしています。操作部は、ドライバーの肩の位置を支点に、シフトノブやステアリング、操作パネルのレイアウトを細かく検証しています。手が届きやすいからと言って、近すぎると圧迫感にもつながってしまうので、手の届きやすさと快適な空間を両立するために、乗員と操作部の距離だけでなく、パネルの角度も細かく調整しています。
ステアリングにスイッチが付いたり、操作部がタッチパネルになったりと、クルマの操作部はテクノロジーの進化の影響も受けます。しかし、ドライバーが無理なく自然に運転できる環境を作るという根底にあるSUBARUの思想は変わりません。実は、SUBARU最初の市販車「スバル360」のカタログの最初にも「ペダル操作が容易である」、「ギヤチェンジ、方向指示器、ライト点灯の操作が楽にできる」という記述があります。安全なクルマへの第一歩として、まずは誰もが安心して運転できる環境を作ること、これはSUBARUが60年以上取り組み続けてきたことなのです。
今月の語った人
坂口 貴浩
株式会社SUBARU 第一技術本部
車両研究実験第二部
埼玉県妻沼町(現熊谷市)出身。入社以来、様々な車種のコクピット周りの開発に携わる。小学生の頃から30年以上サッカー一筋。現在も株式会社SUBARUのサッカー部や太田市のシニアチームに所属し、コーチや選手として活躍するだけでなく、地域の子どもたちへの指導もしている。コーチを務めるSUBARUサッカー部が、今季は社会人登録チームの上位リーグに昇格、さらにサッカーに力が入りそう。
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