ここがSUBARUですVoL.98
変速レスポンスに優れたWRX S4の
スバルパフォーマンス
トランスミッション
DCTに劣らぬ
レスポンスの良さを実現
スバルパフォーマンストランスミッションは、CVT(Continuously Variable Transmission)ならではの燃費性能と、SUBARUが求める走りの良さの両立を追求した“スポーツリニアトロニック”を大きく進化させ、さらにスポーティな走りを実現した新型トランスミッションです。トランスミッションだけでなく、新開発した2.4L直噴ターボエンジンと協調制御を行ない、パワートレイン全体で走行性能を向上させることを追求し、「スポーツ変速制御」を開発しました。
特に注力したのが高速道路での追い越しや合流時など、加速が欲しい場面でアクセルを踏み込んだ際のレスポンスを向上させることです。CVTはプーリーと呼ばれる相互に向かい合った円錐状の部品をチェーンで繋ぎ、プーリー溝の幅を変えることで自由自在に変速することができます。エンジン回転を上げずに車速を上げることができるので燃費は優れているのですが、エンジン回転と車速とのズレがドライバーには不自然に感じられることが課題でした。SUBARUでは人間の感覚にあった自然なフィーリングを持ったCVTを目指してこれまでも開発に取り組んできましたが、今回は積み重ねてきた知見をすべて活かしてアクセル操作に対してエンジン回転と加速度がピタリと追従する滑らかな加速フィーリングを作り込んできました。
目指したのは2系統のクラッチとギヤを使って変速時のタイムロスを減らす、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と比較しても遜色のない“速い変速”です。エンジン制御チームの力も得て、従来行なっていたトルクダウン時の空気量制御に加え、点火時期や燃料噴射量もコントロールすることで協調制御の自由度を高めました。さらにプーリー比によって作り出す擬似的変速段数と変速比をイチから見直し、改めて8速のシフトスケジュールを設計。ドライバーの意思に沿った自然な感覚で乗っていただける変速タイミングを実現しました。
SI-DRIVEのS、S#モード選択時はシフトを8速に固定し、コーナリングではアクセルやブレーキ操作からドライバーの意思を読み取り、シフトダウン時にエンジン回転数を上げて変速ショックを和らげるブリッピングやトルク制御を駆使して、熟練ドライバーが操作するMTのようなスポーティなドライビングを愉しむことができます。これはSUBARU BRZの6速ATで採用した「スポーツモード」と同じ考え方のアダプティブ制御なので、BRZの開発者とスポーティなコーナリングはどうあるべきか意見交換しながら、SUBARUとして一貫性のある変速フィーリングを味わえるように仕立て上げています。
スバルパフォーマンストランスミッションの採用に伴い、SI-DRIVEは3つのモードの変化幅を拡大しました。Iモードは無段変速ならではの滑らかな加速で、街中を思いのままにクルージングするようなシーンにぴったりです。郊外やワインディング路では同乗者にも車窓の風景を楽しんでもらいながら快適に移動できるスムーズな走行を提供します。Sモードは欧州のラグジュアリーセダンの走りを目指しました。変速ショックのないジェントルかつ力強い加速感に燃費の良さも併せ持つバランスの良いセッティングです。サーキット走行でも使っていただけるS#モードはDCTを搭載したスポーツセダンに負けないレスポンスの良い変速を実現しました。ぜひパドルシフト操作で変速の速さをご体感いただきたいと思います。シフトダウンした瞬間の初期の立ち上がりの良さは、常時トルクを切らないリニアトロニックならではのものです。
試乗の際は走り出しの立ち上がりの良さや、走行中にアクセルを踏み増したときのキレのある加速レスポンスをぜひご体感いただきたいと思います。
今月の語った人
井上 秀
車両環境開発部 走行性能開発第3課
佐賀県生まれ。中学・高校時代は硬式野球に力を注いだ。中学時代は地元のボーイズリーグ“唐津スカイヤーズ”に所属。同期には現役プロ野球選手の宮﨑敏郎選手がいる。現在はSUBARU自転車部に所属してロードバイクを楽しんでいる。毎年秋に催される静岡県伊東までの一泊二日ツーリングを楽しみにしているがここ2年開催されていない。お気に入りのヒルクライムスポットは東京・奥多摩の風張峠。路面コンディションが良く景色も楽しめるので日帰りでリフレッシュに出かけるにはぴったりだそう。
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