COCOSUBA

ここがSUBARUですVoL.89

COCOSUBA

SUBARU BRZに搭載した FA24型
「新型2.4L水平対向エンジン」


COCOSUBA ココ→ COCOSUBA ココ→

FA24型のコンロッド クランクシャフトのクランクピンを挟み込むようにして組み付ける大端部の分割の仕方が異なっています。FA24型は予めクランクシャフトとコンロッドを組んでからエンジンブロックに組み込み、後からピストンを取り付けますが、FA20型(左)はその逆の順序になります。FA24型のピストンとピストンピン FA20型(右)と比較して、ピストンピンを支えるボス部が冠面に対して中心寄りにあり、複雑な形状になっています。ボスの内側はすり鉢状に削られています。 FA24型のコンロッド クランクシャフトのクランクピンを挟み込むようにして組み付ける大端部の分割の仕方が異なっています。FA24型は予めクランクシャフトとコンロッドを組んでからエンジンブロックに組み込み、後からピストンを取り付けますが、FA20型(左)はその逆の順序になります。FA24型のピストンとピストンピン FA20型(右)と比較して、ピストンピンを支えるボス部が冠面に対して中心寄りにあり、複雑な形状になっています。ボスの内側はすり鉢状に削られています。

Photographs● 田丸瑞穂

究極まで削ぎ落としたピストン

田中:新型BRZは①「スポーツカーを極める」②「新しい価値の創出」をコンセプトに開発しました。新エンジンに求められたテーマは“出力とレスポンスを向上させてよりスポーツカーらしい走りができる動力性能を持たせること”でした。具体的には、初代BRZで好評だった高回転域まで気持ちよく吹け上がる回転フィーリングを活かしつつ、十分なパワーと低速から7000rpm超の高速域まで力強いフラットトルクをキープすることを目指しました。そのためピストン径を従来型の86mmから94mmに拡大して排気量を2.0Lから2.4Lにアップ。最高出力235PS(173kW)/7000rpm、最大トルク250N・m/3700rpmを発揮する新エンジンFA24型を開発しました。排気量をアップしてもBRZの特徴である軽快感は変えたくありませんでしたから車体サイズと重量は初代BRZとほぼ同じです。これを実現するためエンジンのサイズはFA20型と変えず、重量は軽くしています。排気量をアップして7000rpm超の最高回転数を維持しながらサイズは変えず軽量化もしたところがFA24型の最大の特徴です。これを実現するためのキモとなったのが、ピストン、コネクティングロッド(以下コンロッド)設計でした。

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課 田中 敦之

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課 田中 敦之

田中:ピストン設計で意識しなければならないのが、物体が運動する際に発生する慣性荷重です。質量が大きくなると慣性荷重も大きくなりますが、回転運動では慣性荷重は回転数の2乗で大きくなります。ピストン径を大きくしてFA20型と同じ回転数で回すとコンロッドやクランクシャフトにかかる荷重は大幅に大きくなり、FA20型以上に強度を高めなければなりません。また、ピストンの重さはその往復運動を回転運動に変換するためのコンロッドやクランクシャフトに直接影響するため、ピストンが重くなればその後に続くすべてのパーツが重く大きくなってしまい、最終的にはエンジンブロックのサイズにまで影響します。つまり、ピストンとコンロッドをどれだけ軽くコンパクトに設計できるかが、FA24型を成立させるカギだったのです。細部についてはピストンとコンロッドをつなぐピストンピンにも注力しました。より大きなパワーを受けるためにピストンピン径は拡大しましたが、長さはほぼ変わらず、重量増は9g程度に抑えています。これを可能にしたのがピンを受け止めるボスという部分。FA20型と比較すればこの部分がとても複雑な形状をしていることがお分かりいただけます。ピストン径に対して可能なかぎりボスを中心に近い位置に配置し、不要な部分を削ぎ落とすために内側をすり鉢形状にするなど、何度も解析を行ない、出力性能の向上と軽量化を両立させるピストンを作り上げたのです。

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課 細田 奈々日

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課 細田 奈々日

細田:コンロッドはクランクシャフトとつながる大端部の径を2mm拡大していますが重量はFA20型と変わらず、サイズもほぼ同じです。軽量化のためにSUBARUとサプライヤーで特許を取得した高強度材を採用し、大端部の形状を左右対称に変更しました。これは生産ラインの工程を大きく変える変更ですが、FA/FB系史上最大の荷重がかかるコンロッドベアリングの信頼性を確保するために欠かせない形状でした。どうすればピストン径を拡大し、FA20型と同じ最高回転数まで回せるコンロッドにできるのか、困難な開発でしたが、FA20型エンジン開発から10年を経る間に積み重ねてきた設計・研究実験両者の知見とサプライヤーの知見とを駆使して造り込んだ形状です。
今回のコンロッド開発は2016年に入社した私が最初に任された仕事でした。それから5年を経てようやく量産エンジンが完成しました。入社したての人間でも一人の技術者として意見を求められ、関わるメンバー全員が同じ目線で“新型BRZとして何がベストなのか”を求めて様々な課題に挑戦したことや、課題が発生したときは必ず現物を囲んで議論をし、そこから知見を得て解析の精度をアップすることなど、SUBARUらしさを感じた濃密な5年間でした。

今月の語った人


細田 奈々日(写真左)田中 敦之(写真右)

細田 奈々日(写真左)

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課

北海道札幌市出身。小学生の時に初めて東京ディズニーランドに行って以来のディズニー好き。千葉にある大学に進んだ年は1年で18回足を運んだ。日常を離れ夢の世界に浸れるのがリフレッシュになり、園内を散策するだけで楽しめる。昨年からディズニーランドでもビールOKになったので、友人と散策しながら美味しいビールを飲むのが楽しみ。

*まん延防止等重点措置のため、8月22日までアルコールメニューの提供を休止中です。
詳しくは東京ディズニーランド公式ホームページをご確認ください。

田中 敦之(写真右)

パワートレイン設計部 エンジンシステム設計第一課

東京都練馬区出身。中学で始めた硬式テニスは仙台の大学時代に東北大会で優勝するほど熱を入れて取り組む。今も東京多摩地区の社会人サークルとSUBARUのチームに所属して愉しんでいる。好きなプレイヤーは頑張り屋で所作が美しいレイトン・ヒューイット選手。今は5月末に生まれた第一子の赤ちゃんの顔を見ている時が一番心がやすらぐそう。

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