ここがSUBARUです。Vol.45
BRZ STI Sportの上質な走り味を実現した
STIチューンの足回り
目指したのは“しなやかな走り”
BRZ STI Sportで目指したのはスポーティであるのはもちろんですが、さらに上質さを感じさせる“しなやかな走り”です。そのためにSUBARUの開発チームと共にじっくりとサスペンションや車体の開発を行ないました。まず、よりスポーティな走りを可能とするため、18インチハイパフォーマンスタイヤと軽量で高い剛性を持つSTI製アルミホイールを採用しました。これにより、コーナリング時の限界速度が上がり、より高いスピードでも安心して気持ち良く曲がれるようになりました。また、さらに上質な走りを追求し、STIがチューニングしたダンパーとコイルスプリングを装備しました。これにより、乗り心地と静粛性を高めています。
そして、STIが目指している“しなやかな走り”を実現するために採用したのがフレキシブルドロースティフナーとフレキシブルVバーです。
パーツの説明をする前に私たちが追求している“しなやかな走り”とはどういうことかをお話します。一般的に走行性能を高めるためには、タイヤのグリップ力を上げ、タイヤから入って来る荷重を受け止めるために車体の剛性を高め、サスペンションも固くします。それで速く走れるようにはなりますが、日常での乗り心地の良さや走りの質感は損なわれてしまいます。私たちが目指しているのは、スポーティさと上質さを両立し、日常での乗り心地も良くすることです。そのためにSTIが開発し、今回採用したのがフレキシブルドロースティフナーです。
必要な方向にだけ力をかける
フロントタイヤから入った荷重は、①ハンドルからの力をタイヤに伝えるタイロッド→②車体の骨格でありステアリングギヤボックスを取り付けているクロスメンバー→③クロスメンバーと車体をつなぐサブフレーム→④車体本体という順序で伝わっていきます。クロスメンバーやサブフレーム、車体は金属製の固い部品なのですが外部からの荷重がかかると、それぞれわずかですがバネのような動きをします。それらの動きの微妙なズレが、ハンドル操作に対してタイヤが反応する際の遅れの原因となります。補剛部品でクロスメンバーとサブフレームと車体を一体化すればその遅れは解消できるのですが、車体のしなやかさが無くなってしまい乗り心地が悪くなってしまうのです。
フレキシブルドロースティフナーは、サブフレームとクロスメンバーの間に引っ張る力(ドロー)を常に加えることでクロスメンバーとサブフレームの動きを一体化させて、遅れの原因となるズレを解消します。さらにバーの両端は自由に動くような構造(フレキシブル)になっているので、タイヤが受けた不快な振動を車体に伝えることもありません。その結果、乗り心地の良さを損なうことなく、ハンドルを切った瞬間、ドライバーが思った通りにクルマを動かすことを可能としたのです。このパーツは今シーズンのSUPER GTに参戦中のBRZやニュルブルクリンク24時間レースのWRX STIにも装備しているのですが、ドライバーも「応答性が良い」「ハンドリングが良くなった」と、その効果を評価しています。
いつも走っている道でもその違いは感じていただけます。交差点を曲がったときは、ハンドルに余計な遊びがないため、切った分だけクルマが向きを変えてくれます。高速道路でまっすぐ走っている時に、わだちや横風でクルマの動きが乱れてもわずかなハンドル操作にクルマが反応してくれるのでふらつくことなく安心して気持ち良く走ることができます。クルマを思い通りに走らせることができるので、心にゆとりも生まれ、運転がうまくなったように感じられます。
この感覚こそSTIが目指した“しなやかな走り”なのです。それは、SUBARUの安心と愉しさにもつながっています。BRZ STI Sportの“しなやかな走り”を生み出しているフレキシブルドロースティフナーは、STIの発想による独自技術です。このクルマの走りこそ、SUBARU/STIらしさを象徴するものだと思います。是非一度お店で試乗してみてください。
ボディ下部クロスメンバーとサブフレームとの間に取り付けられているフレキシブルドロースティフナー。上の写真で野中が左手で指している部分には、同様の発想で作られたフレキシブルVバーが装備されている。
今月の語った人
野中 学
スバルテクニカインターナショナル株式会社 車体技術部 シャシー設計課
1989年北海道生まれ。子どもの頃からクルマやバイクが好きで、大学時代は自動車部に入り、ダートトライアルを楽しんだ。札幌でWRCラリージャパンが開催された際にはオフィシャルとして参加し、STIを身近に感じた経験を持つ。北海道の豊かな自然環境に恵まれて育ったため小さい頃から渓流釣りを楽しんでおり、群馬に住むようになってからもクルマには常時釣り竿を載せている。最近よく行くフィールドは沼田、水上の渓流。釣りをしている時間だけでなく、自宅で毛ばりなどの仕掛けを作っている時間もリラックスタイムになっているそう。
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