ここがSUBARUですVoL.80
「安心と愉しさ」を高い次元で実現した
新型レヴォーグの
ドア構造
ドアが開閉する仕組み
ドアを開けて、ボディとの結合部分をご覧いただくと、上下二カ所にヒンジがあり、その間にドアの内部に入り込む棒があるのがご確認いただけます。センターの棒は“ドアチェッカー”と言って、開閉時にドアを保持する役割を担っています。この3つの部品で一枚約30kgのドアを支え、ドア開閉の質感を作り出しています。ドアチェッカーをよく見ていただくと上下面に波状の凹凸があることがお分かりいただけます。ドアの内側にドアチェッカーを上下から挟み込む部品があり、ドアを開ける際に凹んだ部分で止まる節度感を作り出しています。新型レヴォーグでは、ドア全開までに三カ所の止まる位置を設けています。最初が開け始めて後方確認する位置、次に狭めの国内の駐車スペースで、ぶつからずに乗降できる位置、そしてより広いスペースで無理なく人が乗降できる位置です。車種によってドアの長さが違うため、開く角度ではなく、お客様が実際に使う状況でコントロールしています。
ドアチェッカーには、ドアが閉まる際の力をアシストするというもう一つの役割があります。これはドアチェッカー上下面の凹凸の形状を、閉まる方向に対して角度を調整することで制御します。ドアの開閉力はヒンジの位置にも影響されます。上下のヒンジの位置が垂直軸からズレていると自重でドアが勝手に動こうとする力が働くため、ドアの開閉時に余計な力が必要となります。最近のクルマは、フロントガラス面を大きくし、Aピラーを寝かせて視界性能や空気抵抗性能を向上させているため、Aピラーの付け根位置が前方に移動し、これに伴ってフロントドアのアッパーヒンジの位置が従来のクルマよりも前に設けられています。対してロワーヒンジはフロントタイヤの位置が決まっているため、自由に前に出すことができません。新型レヴォーグでは、ロワーヒンジを新たに設計し、上下方向に長く、前後方向に短い形状に変更しました。これにより、上下ヒンジ軸の角度を、従来よりも垂直軸に近いものに修正し、ドア開閉がよりスムーズに行なえるようにしています。
これに加えて、新型レヴォーグでは、ドアチェッカーを上下から挟み込む部品をラバー製からコイルスプリングに変更して節度感を際立たせることで、ドア開閉中の使いやすさを向上するとともに、軽い力でもしっかりと閉められる安心感の高いフィーリングとしました。店頭で新型レヴォーグに触れる機会がありましたら、ふだんより軽い力でドアを閉めてみて、それでもしっかり閉まる安心感や、ドアが閉まる際の音の質感を確かめてみてください。
ドアビームのもう一つの役割
前後ドアの内部には、上下に一本ずつサイドインパクトビーム(以下ドアビーム)があります。近年では軽量化のためにパイプではなくコの字断面のプレス鋼板を使っているメーカーもありますが、決められた角度から衝撃を与える評価試験に対しては強いものの、衝突角度が変わると変形しやすいという特徴があります。SUBARUでは、実際の事故を考慮してあらゆる方向からの衝突に対して均一の衝撃吸収性能を発揮できるパイプ構造を採用しています。
ドアビームにはもう一つ、ドア面の剛性を確保するという役割もあります。広い面積を持つドア面は、ドアを閉めたときに太鼓のように振動します。ドアビームとドア面を発泡性の接着剤で接着することで、ドア面に剛性を与えて振動を抑えます。これにより、質感が高く安心感のある閉まり音となるのです。新型レヴォーグは、ドア面も従来より立体的な造形となったため、ドア面とビームとの間に距離が生じる部分もしっかりと接着できるよう、各ビーム毎に専用のブラケットを新設計しています。
ワクワクするようなダイナミックなデザインと、世界トップレベルの衝突安全性能を併せ持った新型レヴォーグは、SUBARUが追求する“安心と愉しさ”を、より高次元で実現したモデルです。
今月の語った人
伊藤 憲一
第一技術本部 車体設計部 ドア設計課 担当
長野県安曇野市生まれ。19歳になって進学のため名古屋の都市部で暮らすようになり、初めて故郷の魅力はきれいな空気と水だったと実感した。現在も安曇野に帰った時は実家の水道水をたっぷり飲むのが楽しみ。三輪車に乗っていた子供の頃から車輪の付いたものが好きで、小学生の時には、父親が乗っていたクルマのタイヤを一人で交換した。学生時代にはソーラーカーレースに挑戦。ボディ担当となり、競技車のフレームを作るために近くの溶接工場に通ううちに、レース好きの社長と親しくなり、現在もその社長を中心とした仲間とカート耐久レースを楽しんでいる。
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