ここがSUBARUですVoL.82
新型レヴォーグ全グレードと
フォレスターSPORTに搭載された
CB型1.8L 直噴ターボ
“DIT”エンジン
より軽く、小さくなった
新型エンジン
CB型1.8L 直噴ターボ“DIT”エンジンは、SUBARUの次世代を担うパワーユニットとして2014年から企画をスタートしました。開発のねらいは“普段使いで出力と燃費を両立し、地球環境に配慮しつつSUBARUらしい走りができること”でした。それを実現するため、第一に“軽く、小さく、燃費良く”という開発キャッチコピーを掲げました。お客様に私たちの目指した訴求価値をお届けするため、ほぼ全てのパーツの設計をゼロスタートで見直し、エンジン構造を刷新しました。その結果、従来のFB型1.6L “DIT”エンジンと比較するとエンジンの全長を40mm短くし、重量は14.6kg軽くしています。
排気量については悩んだところですが、“出力と燃費を両立させる”という狙いを成立させる燃焼設計を行なった結果が1.8Lでした。排気量をアップしたことで、最高出力を177ps/5200-5600rpm(従来型170ps/4800-5600rpm)、最大トルクは300Nm/1600-3600rpm(従来型250Nm/1800-4800rpm)に向上し、よりスポーティな走りが可能となりました。特に1600rpmから発生する300Nmの最大トルクにより、スポーティな走行だけでなく、買い物など日常的な街中での走行でどなたが運転されても、意のままに走ることができるレスポンスの良さを実感していただけます。お店でご試乗の際には、走り出した瞬間のクルマの軽さからトップエンドまで滑らかに回転するエンジンフィールを味わってください。
リーン(希薄)燃焼ターボで
燃費向上
排気量を大きくしてエンジンの出力やトルクを向上すると、通常は燃費が悪化しますが、CB型ではリーン(希薄)燃焼を採用することでスポーティな走りと燃費とを両立しています。リーン燃焼は混合気の空気と燃料の比率を、通常よりも空気を増やした状態で燃焼させる燃焼方式のことで、エンジンの熱効率を上げることで燃費を向上します。リーン燃焼を安定させるために、CB型では燃料をシリンダーに噴射するインジェクターを燃焼室のセンターに配置し、点火プラグ周りに質の良い混合気を形成させること、シリンダー内の混合気の流れを解析し、燃焼に適した渦ができるようにコントロールすることで、通常より2倍空気を増やした混合気でもしっかりと燃焼できるようにしています。また、今回は日常使う低回転域や高速道路での巡航時にはリーン燃焼で走行し、高速道路での合流や追い越しなど、トルクを必要とする場面では、エンジンコントロールユニットが通常の燃焼状態に滑らかに切り替えるなど、お客様の気持ちに寄り添った緻密な制御も行なっています。
さらに、リーン燃焼にはターボチャージャーも寄与しています。従来はアクセル開度が小さい、低回転・低負荷時の燃費向上は苦手としている領域でしたが、今回はこの領域でもリーン燃焼で燃費向上するために積極的にターボチャージャーが働き空気をシリンダー内に送り込んでいます。そのため、従来よりも小型のタービンを使用し、立ち上がりから全域で働くターボチャージャーを新開発しました。その結果、排気量を増やし、出力、トルクを向上しながらもFB型1.6Lを上回る燃費16.6km/L※を達成しています。
エンジン小型化による
二つの成果
水平対向エンジンは最もSUBARUらしいメカニズムのひとつです。今回はその利点はそのままに、全長を短縮したことでフロント部のスペースを拡大し、前面衝突時に車両がつぶれるストロークを増やすことで衝突安全性能向上に寄与しています。また、水平対向エンジンの課題であった、エンジンオイル交換時に4L缶で足りないという点についても、オイル循環経路を短縮し、一般的な直列エンジンとほぼ同等の4Lとしました。お客様には整備の際にその違いを実感していただけると思います。
今月の語った人
向來 翔太[こうらい しょうた](写真左)
第二技術本部 エンジン設計部 システム設計第二課
神奈川県川崎市生まれ。エンジニアの父親に連れられて幼い頃から富士スピードウェイや鈴鹿サーキットでフォーミュラレースを愉しむ。現在は自身が父親となり子供と一緒に出かけるレース観戦を楽しみにしている。学生時代は航空工学研究会で“鳥人間コンテスト”の滑空機部門に挑戦した。ココスバVoL.66に登場した内装設計部の小野泰輝は、同研究会の1年先輩で、共に戦った。
桂川 卓磨[かつらがわ たくま](写真右)
第二技術本部 エンジン設計部 主査A5
神奈川県厚木市生まれ。小学1年の頃から少年バスケットボールチームに所属してバスケットを開始。中学・高校時は部活動で、大学入学後は高校のOBを主体とした社会人チーム“Happy People”に入り、現在もフォワードの選手として活躍中。所属選手約30名の同チームは全日本社会人選手権大会に出場した実績も持つ強豪。
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