ここがSUBARUですVoL.63
あらゆる使用シーンを考慮して決められた
フォレスターの車両重心位置
重心位置は走りの性能を
左右する
クルマを開発する際、私たちが企画段階から重視しているのが“車両の重心位置”です。重心位置はそのクルマの使い勝手や運転のしやすさに大きな影響を及ぼすからです。
走行時の挙動変化を減らして安定した走行を保ち、ドライバーに乗り心地が良いと感じていただくためには重心は車両の回転軸の中央で、できるだけ低い位置にあることが理想です。しかし実際には、クルマの駆動方式や、エンジンやトランスミッションなど車両のバランスに大きく関わる重量部品のレイアウトによって重心位置は変わってきます。理想的な位置に重心を設定するには、重量部品の前後左右のバランスと、重心高(※タイヤ接地面からクルマ全体の重心までの高さ)をどこまで抑えられるかが重要なポイントとなってくるのです。
一般的なFF車のエンジンは、進行方向に対し横置きに配置されていますが、エンジンとトランスミッションは重さが違うので、タイヤにかかる荷重が左右で異なってしまいます。そのため右カーブと左カーブとで操作感が微妙に異なり、ドライバーに違和感を与えてしまいます。それに対しSUBARUのシンメトリカルAWDは、左右対称で重心の低い水平対向エンジンを縦置きに搭載できるため、左右のタイヤにかかる荷重を均一にすることができます。また、フォレスターのような背の高いクルマでも、エンジンの高さが低いため、車両の重心高を抑えることができるのです。
SUBARUでは重心位置に早くから着目し、車両の重心バランスや四輪にかかる荷重を計測する装置をいち早く導入しました。現在は重量管理の専門部門を設け、開発過程から重心位置が設計からズレることのないよう、構成する部品一つひとつに至るまで、グラム単位で徹底した重量管理を行なっています。
考え抜かれたフォレスターの重心
フォレスターの重心位置は、ドライバー1名乗車の場合、シフトレバー手前の、ちょうどX-MODEスイッチがある辺りに設定していますが、使用状況によって、上の写真のポインターで示した前後幅で大きく移動します。
クルマの重心位置が移動する理由のひとつは、乗員数や荷物、燃料の量などからくる重量の変化で、重さが加わることで重心は後方に移動します。また、クルマが走行することで生じる慣性力も重心位置が移動したかのような挙動をクルマに与えます。加速時には後方に、制動時には前方に慣性力が働き、四輪にかかる荷重は、走行中、常に変化しています。
フォレスターは、想定されるあらゆる使用状況で、“思い通りに動くこと”を目指してスバルグローバルプラットフォームを磨き上げて完成しました。一般的な走行試験はもちろんのこと、2トンのトレーラーを牽引するなどさまざまな走行試験を繰り返し、あらゆるシーンでの安定した走行性能を実現しています。また重心高はドライバーの腰の辺りに設定しています。これはクルマの挙動を感じながら気持ちよく運転するのに適した位置となっています。
フォレスターの乗り味の良さは、試乗でも分かります。販売店の駐車場から通りへ出て、ステアリングを切り始めた瞬間のクルマの動きに注意してみてください。ステアリング操作に対して極めて素直に気持ちよくクルマが向きを変えてくれることに気づいていただけることと思います。さらに一般道を真っ直ぐ走行している時は、細かい修正舵を加えなくても、クルマが自然に直進してくれます。ぜひ他のクルマと比較しながらSUBARUの安定した走りと安心感を体感してください。そこで感じた違いが、私たちが重心位置を意識しながら磨き上げてきた、SUBARUらしい走りなのです。
今月の語った人
中路 智晴
株式会社SUBARU 第一技術本部
スバル研究実験センター 車両研究実験第一部 第二課 担当
栃木県日光市出身。日光東照宮にほど近い豊かな自然環境の中で育つ。中学のとき、ゲームとWRCのTV放送がキッカケでインプレッサが好きになり、運転やクルマの構造に興味を持つ。SUBARUのエンジニアになることを目指して工学部に入りエンジンを専攻。学生時代はインプレッサをチューニングしてサーキット走行を愉しむ。SUBARU入社後、同僚に誘われてサーフィンを始める。ボードに立ってコントロールできるようになるまで努力や訓練が必要だが、沖での波待ち時間やブルーウォーターに乗った瞬間など、気持ちをリフレッシュできるそう。
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