ここがSUBARUですVoL.106
操舵質感を向上した
CROSSTREKの2ピニオン
電動パワーステアリング
ワンランク上の
操舵質感を求めて
クロストレックは、『FUN=愉しさ』のキーワードを元にSUBARU XVが持っている軽快でスポーティな走りを維持しながら、より愉しさと質感を高めることを狙って開発しました。具体的には、週末に長距離を移動してアウトドアなどのレジャーに出かけるようなシーンでも、ドライバーが運転で疲れることなく、目的地に着いたら家族や仲間と一緒になって存分に身体を動かしていただけるようなクルマを目指しました。これも、クロストレックの提供価値である『FUN』につながるものと考えています。そんなクルマを実現するために、空力パーツやシートなど車両全体でさまざまな取り組みを行ないました。ステアリングにおいても欧州のハイグレード車に採用例の多い2ピニオンEPS(電動パワーステアリング)を採用し、ワンランク上の質感を達成するための新しい制御を導入しています。
クルマのステアリングは、円形歯車の“ピニオン”と平板状の棒の上面に歯を刻んだ“ラック”を組み合わせた“ラック・アンド・ピニオン機構”を使用しています。かつては人力だけで操舵していましたが、車両の大型化、高出力化にともないエンジンの力を使った油圧バルブで操舵力を補う油圧式パワーステアリングが開発されました。油圧式は路面からのインフォメーションをドライバーに正確に伝えられる反面、速度に応じて操舵力を細かく調整することができなかったため、より緻密に制御できるモーターで操舵をアシストするEPSが開発されたのです。
2ピニオンEPSは、ステアリングシャフトの先にあるピニオンギヤとは別にもう一つのピニオンギヤをラックに取り付け、そちらをモーターで駆動し、ステアリングの操作力をアシストします。この構造のメリットは、ラックを直接駆動するので、路面からのインフォメーションがドライバーに伝わりやすく、滑らかでかつダイレクトな操舵感を実現できることです。
SUBARUで2ピニオンEPSを採用するのは現行レヴォーグ/WRX S4に次いで3車種目なのですが、今回は新たな制御ロジックを織り込むことで、制御の幅が従来の数倍に拡大し、これまではタッチできなかった領域のパラメーターまで制御できるようになり、操舵感を緻密に表現できるようになりました。わかりやすいところでは、駐車時など低速でステアリングがロックするまで切るような場面。最後にガツン!と止まるクルマが多いですが、その当たりを柔らかくすることが可能となり、一格上の操舵質感を実現しています。
制御領域が拡大した反面、制御を使いこなす点と性能をまとめあげる点に苦労しました。そこで、同様のステアリングシステムを採用している他メーカーのクルマの制御と比較しながら、SUBARUらしさを表現できる操舵力や操舵感とは何かをチームで研究・議論を繰り返しました。その結果、クロストレックのステアリングで目指した姿は〝ドライバーに路面の状況をしっかり伝えること〟でした。SUBARUの強みは、スバルグローバルプラットフォームやシンメトリカルAWDによって得られる高い操縦安定性です。とはいえ過信は禁物です。より安全に運転していただくためには、逐一変わる路面状況をドライバーに伝えることが大切です。そのためには、ハンドルから伝わってくる路面からのインフォメーションを正確にドライバーに伝えるステアリング制御が必要です。質感の高さに加え、SUBARUが実現したい『安心と愉しさ』を感じられるステアリングフィールをぜひお店で味わってみてください。
今月の語った人
木村 聡
車両運動開発部 車両運動開発第二課
茨城県取手市生まれ。幼少の頃からスポーツが大好きで、スキーは物心つく前から父親の背中で、ゴルフは小学校の低学年の頃から父親に連れられてスタート。中学校3年でコースデビュー。茨城などのコースで家族ゴルフを楽しむ。家族ゴルフは今も大型連休や年末年始に帰郷して楽しんでいる。ベストスコア76。お気に入りのコースは茨城にある霞南GC。攻略しがいのある難しいコースだそう。好物は茨城の名産品でもある干し芋。幼少期に祖父母が好んで食べていた、噛みちぎるのが大変なほど堅いものが特に好き。
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